創業経営者のお金の使い方:「お金はないけど、使う」

創業経営者のお金の使い方:「お金はないけど、使う」
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■テーマ 創業経営者のお金の使い方:「お金はないけど、使う」

さて前回は 「サラリーマン」・「個人事業」・「法人」と税金」をお送りいたしました。
下記の表のように、三者を比較しながら、かかる税金や、税金に対する有利不利について、述べました。

第18回目となる今回のテーマは、創業経営者のお金の使い方:「お金はないけど、使う」です。
創業経営者の方と日々話す機会があるのですが、経営者によって、大きく二つのタイプに分けられます。
それは「慎重な」経営者と、 「強気な」経営者です。

創業時というのは、例えばまだ、最初の売上が上がっていないとすれば、
確かに「強気」になれる方が不自然で、
「慎重」でなくてはならないと思うのですが、ある程度事業が進行した時点でも、
「慎重な」経営者と「強気な」経営者に分けられるような気がします。

どのくらい「慎重」でどのくらい「強気」であればよいのか、という唯一無二の正解はありません。
ただ、「強気」にお金を使うことが、経営のスピードを早め、事業の規模を大きくすることがあります。

それを理解した上で、今以上に「お金を使う」としたらどんなことに使えるだろうか。
お金を何に使うことで、いまよりも事業を「早く」「大きく」できるだろうか。

そんなことを考える一つのきっかけにしてもらいたいと思います。

■お金を使うことで経営のスピードが上がる

まずは、「お金を使うことで、経営のスピードがあがる」ということを、
3人の創業経営者を例に、示したいと思います。

共通の前提事項は、以下の2点となります。

・新規の売上は、前月の営業時間の20%が翌月から計上される。
・一度獲得した売上は、来月以降も計上される。

まず、ご紹介したいのは、慎重で堅実なA社長です。
当初はお客さんがいなかったため、100%の時間を営業に充てていましたが、徐々に仕事が増えるにつれ、
自身の営業の時間を減らして、売上を上げるための業務時間に時間を費やします。
無駄なコストもかけないため、非常に堅実な経営をされている社長です。翌1月には93の利益を計上しています。
しかし、このやり方では売上は100を超えないということも言えます。

次にご紹介したいのは、強気のB社長です。
B社長は、自分の営業時間を100%確保するために、業務はその売上の3割の給料を払って従業員に任せます。
その結果、5月まではA社長の利益よりも少なかったのですが、6月以降はA社長の利益を超え、
翌1月には168の利益を計上しました。

次にご紹介したいのは、もっと強気のC社長です。

C社長は、B社長と同様、業務は従業員に任せることの他に、当初から広告費を毎月20かけて
新規売上の獲得を追加的に10だけUPされることに成功しました。
当初は広告するための資金も持たなかったのですが、これについては20だけ融資をすることで賄いました。

当初は、利益もA社長、B社長を下回っていましたが、5月以降はA社長、
B社長を上回る利益を計上し、翌1月時点の利益は232となりました。

翌期は、計上された利益を更に投資に回し、営業人員を追加し、
IT投資による業務効率化を進めるとのことです。

A社長、B社長、C社長の例は、とてもシンプルですが、最初からお金を使って投資したC社長は、
当初融資をし、当初は投資による資金や利益の圧迫を受けましたが、ビジネスの規模・スピードにおいて、
後々にはA社長、B社長を上回ることになったということが、よくわかると思います。

もし、3名のお金や時間の使い方に対する思考が一定だとすると、
5年後や10年後にはどれだけの差がつくでしょうか。
想像するだけでも全く違うことになっていると思いませんか。

■創業の経営者のお金の使い方:お金はないけど、「つかう」!?

「お金を使え」といっても、「創業時はお金がないじゃないか」という声も聞こえてきそうですが、
ちょっと誤解を恐れずにいうと「なくても、(借りてでも)使え」ということになります。
「お金が増えた」から「使う」のではなくて、「使う」から「増える」ということです。
もうちょっと正確に言うと、「使って」「増やさないと大きくなれない」ということです。

もちろん「使えば100%増える」ということではないので、お金を使って、損をするリスクは当然あります。
リスクを負うがお金を使って、増やすことができれば、事業を「早く」「大きく」できるということです。

私がここで言いたいのは、

「お金がない」⇒「使わない」⇒「お客さんが来ない」⇒「お金がない」
という状況のままではいけないということです。もしこのサイクルを抜け出すとすれば、
どこかで「お金がないけどお金を使う」という意思決定が必要になるということです。

この点、先日金融機関との付き合い方の話(第16回)をしましたが、銀行もその経営者は
お金を使って増やせる人かそうでないか、最初は少額だけを貸し付けることで試しています。

そして、しっかり増やしてしっかり返済した経営者には、次はもっと貸すのです。

■使いすぎにはご注意ください

創業の経営者の多くは、「お金がない」から「使わない」という経営者が多いです。
ですので、今回は敢えて極端に、「お金を使いなさい」という論調で書いています。
ただし、何に使うかは慎重に吟味し、また「使いすぎ」にはご注意ください。
お金を使うということは、投資額以上のコスト削減・売上増進効果を生み出すということが
経営者に課せられますし、それは、多額に使うほどそのハードルは上がってくるということでもあります。

■経営のスピード感:アクセルとブレーキのバランスについて

A社長、B社長、C社長の誰が正解ということもありません。C社長以上に先行投資したD社長が、
融資を返済できなくなったという話もあります。

経営のスピード感、いわば経営のアクセルとブレーキのバランスに正解はないのですが、
孫正義さんは、
「トカゲの身体は切られても3割までならしっぽだからまた生えてくる、5割だと内臓だから死んじゃう」
というような内容のことをおっしゃっていました。

当然リスクを負って、投資せよとは言いますが、「これが失敗したら会社が倒産する」
というようなイチかバチかの投資は勧められませんし、
失敗しても死なない程度の投資でなくてはなりません。

また使うからには、より回収可能性や、投資効果を高める手法について勉強し、
勝算を高めてから投資をしなければなりません。

「使って増やしている経営者」は、「勉強」しています。

「勉強」をして、勝算が高いと踏んでいるから、周りからみたら「思い切った投資」ができるのです。

お金を「稼げる」「貯められる」経営者はすごいのですが、
「お金を使える」経営者になっていくことが、今よりも事業を伸ばすための要素になると私は考えています。

■あとがき

今年の2月2日に、3名のスタッフと日本橋人形町の新事務所に移転いたしました。
http://goo.gl/VphyHO
思えば開業から2年間は、本当に休む間もなく働きました。顧客ゼロから開始して、
創業融資で借りた資金も多くを使い果たしましたが、やっと3名のスタッフを雇用し、
20坪のオフィスを借りられるというところまで来たところでございます。

そんな中で最近は、人を雇用することや、組織化していくことの難しさを痛感している日々ですが、
お客さまに対する弊社の一つのコミットメントがあります。それは、弊社が、
お客さまの会社が大きく成長していくということを支援する会社である以上、
弊社自身も大きくなっていくということです。

弊社が大きくなる過程で、私自身が会社を大きくする度に出現する経営上の新たな壁にぶち当たり続け、
それを克服しようと努力し続けることが、成長し続ける会社経営者の悩みに対して
共感し続けられることの条件だと思っております。

しっかりお役に立ちながら、大きくなっていける会社でいられるよう、
「勉強」と「実践」を続けて参ります。

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