第1章 成功事例に学ぶ経営のメソッド「数字の活かし方」

成功事例から経営のメソッドを学びましょう!

昨今、介護や飲食、教育業界などさまざまな業界で人材不足と言われています。需要はあるのに供給できないでジレンマを感じている経営者の方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、建築専門の人材業界で伸び悩んでいた会社をコンサルティングした話をご紹介します。実際の成功事例から学べる、数字を活かすノウハウが盛りだくさんです。業界は違っても、業績が伸び悩んでいる経営者の方は必見です。

【この記事のポイント】

  • 業績が上がらないのは、メンタルブロックで現状を可視化していないこと
  • 見たくない不安要素を可視化する時には「仮に」「空想で」という気持ちで見る
  • 業績不振から成功に導いたのは、数字で可視化したから
  • 可視化することによって問題が明確になると、打開策が見えてくる

【この記事を読んでほしい人】

  • 採用を強化し事業を大きくしたい会社の経営者
  • 業績が伸び悩んで困っている経営者
目次

よくあるお悩みー業績が上がらない

なぜ業績があがらないのでしょうか?

「良い人をじゃんじゃん派遣してくれ」とお客さんから言われるんだけど、腕のいい職人や資格を持つ技術者の採用は難しくってさ」
社長は頭をかきながらそう言いました。

P社は創業10年超の企業で、100人弱の職人・技術者を雇用している、建設に特化した人材派遣会社です。

他業界以上に建設業界の人材不足は、年々深刻度を増しています。
現場で稼働する職人や、職人をマネジメントできる監督、専門の技術者など、どこでも人を欲しがっています。

これだけ売り手市場で絶好の成長のチャンス、であるはずなのにP社の業績はここ数年間横ばいを続けていました。

なぜそうなってしまっているのでしょうか。

スキルの高い職人や技術者はお客様からも引きがあり、高いフィーをとれます。
しかし、彼らはどこへ行っても仕事がありますから、離職率も高い。
また、採用も容易ではなかったのです。

P社は、派遣先から依頼がたくさんあっても、それに応えられるだけの職人や技術者を確保できませんでした。
そのため、業績が横ばいを続けていました。

<ポイント>
派遣先からの需要はあっても、それに応えられるだけの職人や技術者の確保ができていなかった。

よくある思い込みー成長を妨げる「なんとなく」

なんとなくの悪いイメージが、会社の成長を妨げていました

派遣先からの需要に応えるためには、大きく2つの選択肢がありました。

  1. スキルが高く単価の高い職人や技術者を確保する
  2. 経験の浅い職人や技術者を多数雇用して育成する

ご存知のように、売り上げは「単価×数量」です。
1は単価を上げるスタイル、2は数量を上げるスタイルとなります。

社長

1は今でも頑張っているし、2だと採用費や教育費で最初は赤字になるからやりたくないし・・・

萩口

そういえば社長は前に「1,000人規模の会社を作りたい!」とおっしゃっていましたよね

社長

そうなんだ、将来は1,000人規模の会社にしたいんだよ

萩口

だったら、1と2どっちですか?社長の夢に近いのは

社長

2だよね、でも採用すればするほど赤字になるのが、どうもね

もし20年前なら1でも、従業員1,000人規模の会社は目指せたでしょう。
しかし時代は変わっています。このままでは、慣れたパターンから抜け出せません。

社長の夢に近いのは1とわかっているにも関わらず、社長は実行してきませんでした。
それは、赤字になるイメージだけが先行してしまったからです。

<ポイント>
赤字になるイメージが先行し、具体的な検証をしないままにしてしまっていた。

誰しも、自分のウィークポイントをまじまじとみつめるのは苦痛です。
しかも、初めから赤字になることはわかりきっている。

経営の舵をきることを躊躇し先に進めなくなっていたのです。

現状分析ーなんとなくから、数字で表して可視化する

なんとなくではなく、なぜだめなのか数字で表して検証してみましょう
萩口

空想でもいいので、2ですすめるとしたらどういうやり方になるでしょう。

社長

まず経験豊富な職人についてもらって・・・

★空想でいい、と言われて社長の頭が回転し始めました。

資金繰り以外の面ではかなり具体的に方策が描けているのです。

萩口

それはいいですね。では、シミュレーションしてみましょう。1人当たりの採用費にはいくらかかりますか?

社長

いや、でも、赤字だから計算しても意味がないよ?

萩口

仮に計算してみるだけですよ。採用費はいくらですか?

社長

だいたい30万円かな。

萩口

未経験の職人をお客様の元に送り出せるようになるまでの人件費と教育期間は?

社長

一月あたり30万円で、期間は2か月くらいだな

この話をきいて私は、未経験者一人を採用した場合のキャッシュフローを計算しました。

未経験者を一人採用するには30万円の採用費がかかり、2か月程度の研修期間の間、売り上げは0ですが、30万円の人件費などは払わないといけません。

つまり採用から2か月間でマイナス90万円となるわけです。

【かかる費用】

  • 採用費・・・30万円
  • 研修費(研修期間か月分の人件費)・・・30万円×2か月で60万円
  • 30万+60万円=90万円の赤字
社長

90万円の赤字はやっぱりきびしいな

萩口

ちょっと待ってください、3か月目からは毎月稼いでくれるんですよね?

社長

まあ、そうだよ

萩口

月いくら稼いでくれるんですか?

社長

うーん、45万円くらいかな

萩口

ということは、給料30万円を差し引くと、3か月目からは、毎月差し引き15万円稼いでくれるんですね。採用当初の赤字の90万円がいつ回収できるか、計算したことはありますか?

社長

え?

萩口

単純な話ですよ、毎月15万円プラスになっていく。なら、プラスの累計は15万、30万、45万、と毎月増えていって、90万円を回収できるのは・・・

毎月15万円の売り上げを上げていくと仮定すると、採用当初最高90万円あった赤字が回収できるのは、8か月後でその後は黒字に転じます。計算を基にグラフを描いてみせると、社長の目が輝きました。

社長

現場にでて8か月後に黒字か

萩口

研修が2か月、その半年後採用から8か月後でとんとん、それ以降はプラスになる計画です

社長

それ以上働いてくれればどんどんうちのもうけが増えるってことだ

萩口

そうですね

社長

いけるんじゃないか、これ

萩口

もう少しいろんなパターンを計算してみましょうか

<ポイント>
★「仮に」「空想でいい」と言われて、現状を可視化したことで、「いけるんじゃないか」と確信が持てた。

可視化して明確になると、状況は好転する

可視化して問題点を明確にすると現状は好転する

単純計算ですが、2人採用したらもうけはこの2倍、10人採用したら10倍です。

10人採用した時の、研修期間2か月のマイナスは900万円になります。ですが、8か月後には回収でき、9か月目からは毎月150万円の収益になります。

赤字がきつければ、いきなり10人採用ではなく、月をずらして採用します。そうすると赤字の波を緩やかにする効果があります。

このような空想上のシミュレーションによって、採用活動にどこまでアクセルを踏み込んでいいか、逆に言えばいつ何人採用したら資金がショートするのかが明らかになりました。

社長

毎月10人ずつ、10か月で合計100人採用しても、最大3,750万円の赤字か。この程度なら許容範囲だな。銀行にも融資の依頼をして、教育プログラムを作りこもう。

P社の社長は年度中に教育の制度を作りこみ、フル回転で未経験者の採用に注力していきました。

結果、年度末の決算の時には職人・技術者の数は130人になっていました。

未経験者が続々と入社した初年度は、当初のもくろみ通り見事に赤字に転落しました。

しかしそれ以降の業績はアップするばかりです。
ますます、採用に向けてアクセルが踏み込める状態になりました。
現在では、研修期間も一か月に短縮でき、当初の事業計画よりも上振れしています。

一時的な赤字を怖がって採用にブレーキをかけてしまっていたけど、○か月後に□円の赤字、何か月目から黒字と数字が明確になったため、方向転換することができたのです。

P社は未経験者を採用し、戦力化して収益を生むモデルを確立しました。
社長が目指す1,000人規模の会社も現実味を帯びてきました。

業績不振から大成功!その要因は?

今回の成功要因をひも解いてみましょう

今回のケースは、検証せずにイメージが先行して実行できなかったところを、数字を使って可視化したことで解決できた事例です。

数字を使ったとはいってもそれほど難しい計算をしたわけではありません。

採用、教育分のマイナスと、採用後のプラスを1人あたりいくらに分解して、計算したらいける、とわかり考えが変わりました。

数字を使って可視化する前は、なんとなく赤字になるのが怖くて、教育は大変だし、どうだろうと漠然と恐れていました。

しかし

  • 教育コストの金額
  • 一人あたりの赤字額は最大でも90万円
  • 10人雇っても赤字の最大は900万円
  • 入社後8か月目には全額回収できる
  • 9か月後には黒に転じる

ということが明確になり、怖くないということに気がついたのです。

可視化する前は、漠然と怖い、やってもしょうがないよねと諦めていました。

そんな風に、できない前提で考えていては、何も前に進みません。

この呪縛から解放するためあえて、仮にとか、空想でもいいのでという表現を使いました。

そうすると、意外と素直に考えられたりするものです。

できない前提ではなく、もしやるとしたらどうだろうとまず数値化をしてみる。

なんとなく赤字が恐いから対策できない、から

  • 一人当たり具体的に何万円の赤字になるのか
  • 10人採用したらいつの時に最大何万円の赤字になるのか
  • いつ回収できるか

と数値化されて明確になったことで「できそうだ」と確信を持って言えるようになったのが、成功要因になりました。

まとめ

昨今、介護や飲食、教育業界などさまざまな業界で人材不足と言われています。しかし、需要はあるのに供給できないでジレンマを感じている経営者の方も多いのではないでしょうか。また、業績が伸びていかなくてなぜ、と頭をかかえているという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで今回は、建築専門の人材業界で伸び悩んでいた会社をコンサルティングした話をもとに、経営に役立つノウハウをご紹介しました。

実際の成功事例から、数字を活かすコツをつかんでいただけたら幸いです。

ただ、経営は一杉縄ではいかないですよね。

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