【建設業】会社設立する時の資格や許可と手続き方法を徹底解説します

目次

建設業での会社設立は、開業までの段取りや資格や許可の取得など、計画的な準備が必要です。許可や資格、手続きの詳細を知らないと、思わぬトラブルを招く可能性があります。また、開業後に安定的に事業を運営するにはいくつかのポイントもあります。

そこで本記事では、建設業で会社を設立する際の手続きの流れや必要な資金、設立後の運営のポイントなどを詳しく解説します。これから建設業で独立を目指す方が必要な知識を得られる内容ですので、ぜひ参考にしてください。

建設業で会社設立するために必要な許可・資格

建設業で会社を設立するためには、特別な許可や資格が必要です。本章では、建設業開業に必要な許可の種類と業種、許可の取得要件を解説します。

建築業許可の種類

建設業許可は、まず知事許可と大臣許可の2種類があります。また、それぞれについて一般許可と特定許可に分かれています。

知事許可と大臣許可
知事許可 1つの都道府県の区域内にのみ営業所を設ける場合に取得する
大臣許可  2つ以上の都道府県に営業所を設ける場合に取得する
一般許可と特定許可
一般建設業許可

請け負った工事を下請けに出さない場合か、
下請けに出す1件の工事代金が4,500万円(建築工事一式の場合は7,000万円)未満の場合に取得する

特定建設業許可

発注者から直接請け負った1件の工事について、
下請け代金の額が4,500万円(建築工事一式の場合は7,000万円)以上の場合に取得する

許可の業種

建設業許可は29種類の業種に分かれており、工事の種類に応じた許可を取得する必要が業種に応じた専門性を持つ技術者と資材が求められるため、事前に自社の業務範囲を明確にしておくことが重要です。建設業許可は元請けだけでなく、下請けや法人・個人にも適用され、一定規模を超える工事を受注する場合に必須です。なお建設業許可の29業種とは以下の業種です。

  1. 1. 土木工事業
  2. 2. 建築工事業
  3. 3. 大工工事業
  4. 4. 左官工事業
  5. 5. とび・土工・コンクリート工事業
  6. 6.石工事業
  7. 7.屋根工事業
  8. 8.電気工事業
  9. 9.管工事業
  10. 10.タイル・れんが・ブロック工事業
  11. 11.鋼構造物工事業
  12. 12.鉄筋工事業
  13. 13.舗装工事業
  14. 14.しゅんせつ工事業
  15. 15.板金工事業
  16. 16.ガラス工事業
  17. 17.塗装工事業
  18. 18.防水工事業
  19. 19.内装仕上工事業
  20. 20.機械器具設置工事業
  21. 21.熱絶縁工事業
  22. 22.電気通信工事業
  23. 23.造園工事業
  24. 24.さく井工事業
  25. 25.建具工事業
  26. 26.水道施設工事業
  27. 27.消防施設工事業
  28. 28.清掃施設工事業
  29. 29.解体工事業

建設業許可の取得要件

建設業許可を取得するには、以下の要件を満たす必要があります。

要件 概要
経営業務の管理体制 経営に必要な知識や経験を有する人材を確保し、適切な経営体制の構築を行う。
専任技術者

専任技術者は、以下のいずれかの条件を満たす必要があります。
・国家資格を持つ技術者
・指定された学科(建築・土木など)を卒業後に実務経験を積んだ者(高等学校卒業の場合は5年以上、大学卒業の場合は3年以上)
10年以上の実務経験を持つ者

誠実性

不正行為や不誠実な行為を行う可能性がないことが条件。
信頼できる事業運営が可能なことを示す。

財政的基盤

安定した経営のため、原則として自己資本は500万円以上必要。
この基準を満たすと、事業継続が可能な資金的裏付けがあると認められる。

欠格要件

事業者やその役員が、社会秩序を乱すような行為や、他者に損害を与えるリスクがないことが求められる。
公共の福祉を損なうおそれがない事業体である保証になる。

※202010月の建設業法改正により、経営業務管理責任者の設置義務は廃止されました。代わりに、『経営業務の管理体制』を整えることが要件となり、経営に必要な知識や経験を有する人材を確保し、適切な経営体制を構築する必要があります。

これらの要件を全て満たすと、建設業許可の取得が可能になり、正式に事業を開始する準備が整います。

建設業で会社設立するために必要な費用・資金

建設業で会社設立するには、通常の起業時にかかる費用に加えて、特有の費用がかかります。本章では、建設業で会社設立する際に、どのような項目にいくらかかるかを解説します。

開業時

建設業で会社を設立する際には、開業資金として初期費用を準備する必要があります。まず、大規模な工事を請け負うために建設業許可を取得する場合には、原則として500万円以上の自己資本が必要です。また、株式会社を設立する場合は、定款の認証手数料や登録免許税などで約22万円から24万円の資金がかかります。さらに、事務所を新たに構える場合には、敷金や礼金、前家賃といった賃貸契約関連の費用に加え、家具や備品の購入費用も準備しなければなりません。これらを合計すると、会社設立時では「約500万円から1,000万円」の資金が必要となります。

運営・ランニングコスト

建設業で会社を設立した後、運営やランニングコストとして、人件費、車両維持費、事務所運営費、保険料、税金などが発生します。また、建設機械の購入・リース費用や、建設業許可の更新費用(5年ごとに更新)も考慮する必要があります。特に建設機械の維持費用やリース料は事業規模に応じて大きな割合を占めるため、初期計画に組み込むことをお勧めします。

人件費は、従業員の給与や社会保険料に加え、必要に応じて外部スタッフへの支払いも含まれます。車両を利用する場合は、燃料費、メンテナンス費用、自動車保険料などの維持費も考えなければなりません。事務所を構える場合は、家賃や光熱費、通信費などの運営費が必要になります。また、事業活動では、損害保険や工事保険などの加入が欠かせません。さらに、法人税や消費税、事業税などの各種税金の納付も考慮に入れる必要があります。これらのランニングコストは、従業員の雇用形態、扱う重機、事務所の規模によって異なります。初期の運転資金を確保し、定期的に収支を確認しながら慎重に経営をすることが重要です。

建設業で会社を設立し事業を開始するまでの流れ

建設業で会社を設立し事業を開始するまでの流れ

建設業で会社を設立し事業を始めるには、計画的な準備と手続きが欠かせません。本記事では、まずはじめに取り組むことから開業、許可申請の流れを解説します。

企業で働いて実績を積む

建設業での開業を目指す場合、まずは企業に勤めて経験を積むのが一般的です。建設会社の社員や下請け作業員として働き、実務を通じて業界の知識や技術を習得します。特に、自分が専門とする分野のスキルを磨き、信頼を築くと将来の独立に役立つでしょう。また、業務を通じて取引先や同僚とのネットワークを広げておく点も大切です。これらのつながりは、独立後に仕事を受注する際に強力な基盤になります。スキルが十分に身に付き、独立したほうが収入面や働き方でメリットがあると感じた時点で、独立への計画を進めましょう。

専任技術者の資格を取得する

十分なスキルを習得した後は、専任技術者の資格取得を目指しましょう。専任技術者は建設業許可の取得に必要な要件の一つで、この資格を持つと大規模な工事の受注が可能です。専任技術者として認められるには、国家資格である施工管理技士(建築・土木・電気工事など)や、技能検定試験に合格しなければなりません。これらの資格は専門分野の知識と技術を証明するもので、事業運営における信頼性の向上にもつながります。資格取得には試験の準備が必要ですが、過去の業務経験が役立つ場合も多く、実践で得たスキルを生かせる点がメリットです。資格取得を目標に、計画的に準備を進めましょう。資格を取得して専任技術者になれば、事業拡大の選択肢が広がり、顧客や取引先からの評価向上が期待できます。

事務所準備・開業する

建設会社を設立する準備が整ったら、次は事務所の準備と開業手続きに進みます。事務所は、運営の中心になるため、立地や設備をよく検討しましょう。最初は自宅の一部を使用することもできますが、適切な場所に事務所を構えたほうが事業が拡大してもスムーズに業務が遂行できます。事務所の賃貸契約や必要な備品の手配も必要です。

会社を法人として設立する場合は、法人登記手続きが必要です。建設業の会社の場合、商号(会社名)に『建設』や『工務』などの業種を表す文字を含めると、事業内容が明確になり、取引先に与える印象も良くなる場合があります。また、定款には建設業に関する具体的な事業目的を記載する必要があります。会社名、事業目的、役員構成などを決め、定款を作成することから始めます。定款の認証を公証人役場で受けた後、法務局に登記申請をします。また、大きな規模の工事を受注する場合は、建設業許可の取得も必要です。登記申請をすることで、法的に必要な要件を満たし、正式に事業を開始できます。

建設業の許可を取得する

建設業を営み、一定の規模以上の工事を請け負う場合、建設業許可を取得する必要があります。例えば、1件の請負金額が500万円(税込)を超える場合は、個人事業主でも法人でも許可を取得しなければなりません。また、建築一式工事では、請負額が1,500万円(税込)以上、または延べ面積が150㎡以上の木造住宅の場合にも許可が必要となります。逆に、500万円(税込)未満の工事であれば許可は不要ですが、業界内の状況や取引先の要請により、許可を取得することが望ましいケースもあります。建設業許可を取得すると公共工事の受注が可能になりますが、公共工事を請け負うには『経営事項審査(経審)』を受ける必要があります。経審では、企業の財務状況や施工実績、技術力が評価され、総合的な点数(経審点数)が一定基準を満たすと公共工事の入札に参加できます。また、建設業許可を持つと、法的な信用が得られ、契約時に有利に働く場合が多いです。許可を申請するためには、必要な書類や要件を整え、申請を行わなければなりません。(要件は前章を参照ください。)この手続きを踏むと、事業の拡大や安定した運営に繋がります。

建設業で会社設立する時のポイント

建設業で会社設立する時のポイント

建設業で会社を設立する際には、仕事の受注方法や事務作業の効率化など、押さえるべきポイントがあります。本記事では事業成功に向けた重要なポイントを解説します。

仕事の受注について

開業当初は、知名度や実績が足りないため、顧客獲得のためには営業活動が欠かせません。ホームページを作成してオンラインでの存在感を高めたり、建設業専用のポータルサイトに広告を掲載したり、地元の活動に参加するなどの対策が考えられます。また、SNSでの発信を通じて、ターゲットとなる顧客層にアプローチする方法も効果的です。定期的に顧客に連絡し、進捗や状況を確認すると信頼関係が深まり、次回の依頼を得やすくなるでしょう。仕事の安定的な受注には地道な営業活動が欠かせません。

事務作業について

建設業では経理や営業、税務管理に加えて、工事ごとの原価計算や工事進行基準に基づいた会計処理が求められる場合があります。これらは業界特有の複雑な処理となるため、専門の会計ソフトや外部の税理士を活用することで効率化を図ることが推奨されます。特に経理業務は煩雑で、税務申告の期限を守るためにも慎重に対応しなければなりません。すべての事務作業を一人でこなすのは難しいため、外部の専門家に依頼するか、経理システムや管理ツールの導入を検討しましょう。例えば、会計ソフトやクラウド型の管理システムを利用すると、事務作業の効率化が図れます。また、外部の税理士や経理代行サービスを利用すれば、専門的な知識を有効に活用でき、業務の負担を減らせます。こうした対策を講じることで、事務作業に追われることなく本業に集中できる環境が整います。

固定客を獲得する

安定的な受注を見込んで独立・開業したとしても、仕事が評価されなければ再度受注できる可能性は減っていきます。そうならないためにも、丁寧な仕事をすること、施工後はアフターフォローに気を付けること、定期的な連絡を欠かさないといった努力がリピーターを増やすためには重要です。リピーターが増えれば顧客理解も深まり、よりよい成果が上がりやすくなるため、安定的な運営につながっていくでしょう。

営業資金に余裕を持つ

独立・開業をする前に、十分な自己資金を蓄えておく点が重要です。ランニングコストとして原価の支払いがある以上、原材料費高騰の影響が経営に大きく影響する可能性もあります。また、先に述べたシステムなどを活用するには、導入できるだけの資金の余裕が必要です。システムやアウトソースをうまく活用して、業務負荷を分散し、できるだけ資金には余裕をもって開業することをおすすめします。

まとめ

本記事では、建設業で会社設立する際の手続きの流れや必要な資金、設立後の運営のポイントなどを詳しく解説しました。本記事の内容が、起業を考えている方の参考になれば幸いです。

なお、はぎぐち公認会計士・税理士事務所では、起業に関するご相談も承っております。

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