会社設立時の資本金の決め方とは?金額設定の目安や払込のやり方を徹底解説

目次

会社を設立する際に必ず決めなければならないのが「資本金」です。資本金は単なる出資金額ではなく、会社の信用力や融資の条件、さらには税金や許認可の取得可否にも直結する非常に重要な要素です。しかし「いくらに設定すべきか」「最低限どの程度必要か」と悩む方も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、資本金の決め方や金額の目安、税金や会社経営に与える影響、よくある疑問点についてわかりやすく解説します。資本金をいくらにすべきか悩む経営者の方はぜひご覧ください。

資本金の決め方と金額の目安 

会社設立の際に悩みやすいのが「資本金をいくらに設定すべきか」という点です。資本金は会社の信頼性や資金繰りに直結し、少なすぎても多すぎても将来の経営に影響します。法律上は1円から会社を設立することが可能ですが、実務的には事業の性質や資金需要、税負担、金融機関や取引先との関係などを考慮して慎重に決める必要があります。本章では資本金を決める際の代表的な基準や目安を解説します。

初期費用と運転資金を基準にする

資本金は、会社設立時の初期費用と開業後しばらくの運転資金をカバーできる額を基準に考えるのが基本です。会社登記費用、事務所の賃料、設備投資、人件費、広告宣伝費など、事業開始に必要な支出を洗い出し、さらに3~6か月程度の運転資金を見込んで資本金を設定すると安心です。資本金が不足すると、すぐに追加借入が必要になり資金繰りが不安定になるリスクが高まります。逆に余裕を持たせて設定しておけば、資金面での信頼性が増し、事業を安定的にスタートさせられます。

税負担を考慮して1,000万円未満に抑えるか判断する

資本金が1,000万円以上になると、設立初年度から消費税の納税義務が発生します。一方、1,000万円未満であれば条件を満たす限り最大2年間は免税事業者となれるため、税負担を抑えられます。特に創業間もない時期は資金繰りが厳しい場合があるので、消費税の免税メリットは大きいです。ただし、事業規模が大きく信用力を重視する場合には、あえて1,000万円以上の資本金を設定するケースもあります。税負担軽減と信用力強化のどちらを優先するか、自社の状況に合わせた判断が必要です。

許認可の最低資本金額を満たす

一部の事業では、業種ごとに許認可を取得するための最低資本金額が法律や規制で定められています。例えば、建設業や人材派遣業、宅地建物取引業などでは一定の資本金以上が求められる場合があり、それを満たさなければ事業そのものを始められません。そのため、事業を計画する段階で必要となる許認可を確認し、その基準に合った資本金額を設定するようにします。事業開始後に「資本金が足りず許可が取れない」という事態を避けるためにも、事前に制度を調べて適切に準備しておきましょう。

取引先や業界平均額を参考にする

資本金は外部からの信用を左右する大きな要素です。取引先や仕入先から見て、資本金が極端に少ないと「資金力に不安がある」と判断される可能性があります。そのため、同業他社の資本金額や業界の平均水準を参考にして設定すると、対外的な信用度を確保しやすくなります。特に法人相手の取引では、資本金の規模が契約条件や取引金額に影響する場合もあります。事業規模に対して見合った金額を設定すると、スムーズに取引関係を築けるようになります。

補助金・助成金の条件を考慮する

創業時に利用できる補助金や助成金の中には、資本金額を条件としているものもあります。例えば「中小企業」や「小規模企業者」として定義される範囲を超える資本金を設定してしまうと、申請対象から外れてしまう可能性があります。資本金を多めに設定すると信用度は高まりますが、こうした制度を活用できなくなるリスクもあるため注意が必要です。補助金や助成金の利用を予定している場合は、事前に要件を確認したうえで、それに合う範囲で資本金額を決めると有利に進められます。

銀行口座開設・融資条件を満たす金額にする

銀行口座の開設や融資審査でも、資本金額は評価項目の一つになります。特に金融機関は、資本金が少なすぎる会社を「資金繰りに不安がある」と判断しやすく、融資条件が不利になる場合もあります。ある程度の資本金を用意しておくと、銀行との取引がスムーズになり、融資を受けやすくなるメリットがあります。将来的に事業拡大のために融資を利用する予定がある場合は、必要な信用力を確保できる資本金額を意識して設定すると安心です。

資本金払込のやり方

会社設立にあたり、資本金の払込は必ず行わなければならない重要な手続きです。正しい方法で払込を行わないと登記が認められず、設立自体が無効になる可能性もあります。本章では、株式会社設立時に必要な資本金払込の流れを5つのステップに分けて解説します。

STEP1:発起人名義の銀行口座を用意

まずは発起人(会社を設立する人)の個人名義の銀行口座を用意します。会社設立前は法人名義の口座を作れないため、必ず発起人の口座を利用します。すでに持っている口座でも構いませんが、新しく専用口座を開設しておくと資金管理がしやすく、後の証明書類作成の際も明確になります。口座名義は必ず発起人本人である必要がある点に注意しましょう。

STEP2:資本金を払い込む

準備した発起人名義の口座に、全ての発起人が出資額を払い込みます。複数人で出資する場合は、それぞれが約束した額を同じ口座に振り込みます。振り込み時は必ず「現金振込」や「振込記録が残る方法」で行うようにしましょう。現金を直接入金したり、他人名義の口座を経由したりすると、払込の証明ができず登記が認められない可能性があります。

STEP3:通帳コピーを作成

払込が完了したら、資本金が振り込まれたことを証明するために通帳のコピーを作成します。表紙・見開きの1ページ目・振込が記録されたページをコピーします。これにより、払込が正しく行われたことを法務局に示せます。コピーは白黒でも有効ですが、記録が鮮明に確認できるよう注意して準備しましょう。

STEP4:払込証明書を作成

次に「資本金の払込証明書」を作成します。これは、発起人が実際に資本金を払い込んだことを証明するための書類で、定款や登記申請書と一緒に提出する必須書類です。証明書には資本金の金額、払込日、払込先の銀行名などを記載し、発起人または代表取締役予定者が署名押印します。フォーマットは法務局や専門家のサイトでも入手可能です。

STEP5:登記申請書類に添付する

最後に、作成した払込証明書と通帳コピーを会社設立の登記申請書類に添付します。これらの書類は、法務局に提出する登記書類の一部として不可欠です。万が一記載漏れや不備があると登記が受理されず、設立手続きが遅れる原因になるため、登記申請前に司法書士などの専門家に確認してもらうと安心です。

資本金が会社経営に与える影響 

資本金は単なる出資金額ではなく、会社の信用力や資金調達のしやすさ、さらには事業の許認可要件にまで関わる重要な要素です。設立時に設定した資本金の額が、その後の経営に大きな影響を与えるため、慎重に決める必要があります。本章では、資本金が会社経営にどのような影響を及ぼすのか、代表的な3つの視点から解説します。

信用力・取引先からの評価

資本金の額は会社の「体力」を示す数字として外部から判断されます。特に法人取引では、資本金が少なすぎると「資金力が乏しい」「事業継続に不安がある」と評価され、契約や取引条件に影響することがあります。一方、十分な資本金を設定していれば、信頼性が高まり取引先との交渉がスムーズになります。資本金は単なる内部事情ではなく、外部に対する信用度の指標として機能します。

融資・借入限度額への影響

金融機関が融資審査を行う際、資本金の額は会社の安定性を測る重要な要素の一つです。資本金が少ないと自己資本比率が低く見え、借入可能額が制限されやすくなります。逆に資本金が大きいと、財務基盤が厚いと判断され、融資条件が有利になり、借入限度額も広がる可能性があります。将来的に資金調達を視野に入れるのであれば、信用力を高める意味で適切な資本金設定が不可欠です。 

許認可取得の要件になる場合

業種によっては、事業を行うために資本金の最低額が法令や行政規制で定められている場合があります。例えば、建設業や人材派遣業、宅地建物取引業などは一定以上の資本金がなければ許可を取得できません。そのため、必要な資本金を満たしていないと、事業そのものを開始できないリスクがあります。事業計画に沿って必要な許認可を調べ、要件を満たす資本金額を設定することが重要です。

資本金額が税金に与える影響

会社設立時に決める資本金額は、信用力や融資条件だけでなく、税金にも大きな影響を与えます。特に消費税や法人住民税の負担、法人税の優遇制度、登記時にかかる登録免許税などは、資本金の多寡によって変動します。そのため、資本金額を検討する際には、事業計画や資金繰りだけでなく、税務上のメリット・デメリットも考慮しなければなりません。本章では、資本金額が税金に与える影響をみていきます。

消費税:1,000万円未満は免税の可能性

資本金が1,000万円未満であれば、設立から原則2期目は消費税の納税義務が免除される可能性があります。これは創業間もない企業の資金繰りを支援する仕組みで、大きな節税効果があります。ただし、資本金1,000万円以上で設立した場合は、初年度から消費税の課税事業者となり納税義務が発生します。資本金をいくらにするかは、事業の信用力と消費税負担のバランスを踏まえて決める必要があります。

法人住民税:均等割額の変動

法人住民税には「均等割」と呼ばれる最低課税額があり、資本金の額によって負担が変わります。例えば資本金1,000万円以下の場合は年額7万円ですが、1,000万円を超えると18万円に上がる自治体が多く見られます。この均等割は利益が出ていなくても必ず支払う税金のため、資本金を多く設定するほど固定的な税負担が増す点に注意が必要です。長期的な経営を見据えて検討すべき要素です。

法人税:資本金額による優遇の有無

資本金が1億円以下の中小企業は、法人税率の軽減措置や特別償却・税額控除といった優遇制度を利用できる場合があります。例えば、所得800万円以下の部分に対しては軽減税率が適用されるため、税負担を抑えやすくなります。一方で、資本金が1億円を超えるとこうした優遇の対象外となり、標準税率が適用されるようになります。資本金をどの水準に設定するかで、将来の法人税負担に差が生じます。

登録免許税:資本金の0.7%

会社設立登記を行う際にかかる登録免許税は、資本金額に応じて計算されます。具体的には「資本金の0.7%」が課税額で、最低でも15万円が必要です。たとえば資本金が1,000万円なら7万円ですが、最低税額の15万円が適用されます。資本金が大きくなるとその分税額も増えるため、設立時の初期コストに直結します。事業規模や資金繰りに応じて無理のない範囲で設定するようにしましょう。

会社設立時の資本金に関するよくある質問

会社設立時の資本金については、多くの人が疑問を抱きやすいポイントです。本章では、よくある質問とその答えをまとめました。

資本金は一時的に入れてすぐ使ってもいい?

資本金は登記完了後に会社の運転資金として自由に使えます。ただし、設立時の払込時点では口座に残高があることが必要で、払込証明のために通帳コピーを提出します。その後に引き出して事業に充てるのは問題ありませんが、一時的に入れてすぐ個人的に引き出すような行為は、会社の信用を損なうリスクがあるため避けましょう。

資本金は個人の生活費に使える?

資本金は会社の資産であり、設立後は事業のために使うことが原則です。代表者が個人的に生活費として自由に使ってしまうと、会社と個人の区別が曖昧になり、税務上の問題や背任行為とみなされる恐れもあります。会社から生活費を得たい場合は、役員報酬として適切に設定し、会社の経費として処理するのが正しい方法です。

資本金1円での設立は現実的?

会社法上は資本金1円での設立も可能ですが、実務的には現実的ではありません。資本金が極端に少ないと、設立直後から資金不足に陥るリスクが高く、取引先や金融機関からの信用も得にくくなります。また、業種によっては許認可要件を満たせない場合もあります。最低限、数十万円から数百万円を資本金として用意するのが一般的です。

資本金不足で許認可が取れない場合は?

建設業や人材派遣業など一部業種では、許認可を取得するために一定額以上の資本金が必要です。もし資本金が不足して要件を満たせない場合は、追加出資を行い、増資手続きを経て資本金を引き上げる方法があります。また、許認可取得を急ぐ場合には、出資者を増やすなど柔軟な資金調達を検討する方法も有効です。事業計画に沿って資本金要件を確認しておくようにしましょう。

まとめ

資本金は会社設立時の大切な基盤であり、信用力・資金繰り・税務・許認可など、さまざまな面に影響を与えます。

少なすぎれば信用や資金調達で不利になり、多すぎれば固定的な税負担や初期コストが重くのしかかる可能性があります。

資本金は、目先の費用だけで判断するのではなく、事業計画や業種の特性、将来の成長戦略を踏まえて慎重に決定することが大切です。

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