要素分解で経営改善!ビジネスモデルの評価分析と注意点とは?

ビジネスモデルの評価分析や要素分解の注意点など経営改善に役立つ情報を紹介します!

これまでブログでは、経営改善をする手法の1つとして、要素分解を解説してきました。

経営でいう要素分解とは、事象を構成する要素に分けることです。

例えば、「売上」は何で構成されているのかと要素分解すると、

売上単価ー変動費×販売数量ー固定費

と表せます。

要素分解は経営改善に役に立つ手法ですが、要素分解した後どのようなアプローチをすれば効果的かは、商品や事業の種類によって異なります。

そこで本記事では、要素分解によってビジネスモデルを見た時に、どのようなアプローチが効果的なのかや、要素分解の注意点を解説します。

経営改善に活かせる情報を知りたい方は必見です。

【この記事のポイント】

  • 分解した要素のどこを改善すれば良いのかは、商品や事業のビジネスモデルによって変わる
  • インパクトと順序を見極め、フォーカスする点の優先順位を決めて改善する。その際、費用対効果を考えて取り組むこと
  • 要素分解の観点を取り入れると、社長自身がブラッシュアップされ、根性論から脱却できる

【この記事を読んでほしい人】

  • 経営改善に役立つ情報を知りたい経営者の方
目次

要素分解でみるビジネスモデル

いくつかのビジネスモデルを要素分解してみます

「売上」は、売上単価ー変動費×販売数量ー固定費と要素分解できますが、その後のアプローチには様々な方法があります。

これまでの例で行くと、売上向上に最もインパクトがあるのは、売上単価を上げることですよね。

単価がどうしても上げにくいのであればセット販売なども効果的ですし、固定費を下げるのも方法の1つでした。

客数を上げるのもよいのですが、成約率が低ければ効果がでない、というお話もしました。

ただ、そういった「セオリー通り」にいくものばかりではない、ということも知っておくと便利だというお話をしたいと思います。

投資用マンション販売のテレアポ

例えば、投資用マンション販売。

この業種は、成約率は期待せずに電話の数で勝負するビジネスモデルです。

電話の数1,000本×アポ率1%×商談成約数10%=1件

電話をかけまくるといったある種原始的な方法ではありますが、マンションが一戸でも販売できれば大きな利益がでます。

ただこの場合は、一戸当たり何千万円の商品だからこそ成り立つビジネスモデルといえます。

単価が数千万円以下の商品であったら、このビジネスモデルではなりたちません。

1つの売上が大きい場合、とにかく数をかけるというアプローチも効果的です。

立ち食いフレンチ

いっとき大流行した、立ち食い方式のフレンチやイタリアンのレストランではどうでしょうか。

要素分解すると、売上=単価×客数 と表せます。

「立ち食いフレンチ」業態は、この計算式の客数に着目したものです。

これは、立ち食いフレンチという話題性と、フレンチなのに安く設定した価格性で、行列ができるほどの客数を確保できたため成立したビジネスモデルです。

単価が低くても高級なフレンチを提供できるしくみと、立ち食いにして客数(回転数)を増加させるアプローチが効いています。

このように、分解した要素のどこを改善すれば良いのかは、商品や事業のビジネスモデルによって変わります。

何が適切かを考えていくのは経営者の手腕にかかっています。

サブスク

サブスクとはサブスクリプションの略で、「定期購入、継続購入」という意味です。

最近の流行のように思っている人も多いですが、実はこのビジネスモデルは昔からありました。

例えば、通勤通学定期券がそうですが、定期券を購入すれば一定区間内は乗り放題になるので、これもサブスクの一種です。

サブスクは儲かるといわれていますが、単純に使い放題にすれば儲かるわけではありません。

実行するなら、要素分解をしたうえで、儲かるビジネスモデルを構築して行う必要があります。

サブスクで成功するパターン

サブスクの売上で黒字になると判断できるのは、以下の計算式でプラスになる場合です。

サブスクの単価×販売数ー(固定費+最大に売れたときの変動費)

当然ですが、計算をしないでサブスクを導入すれば失敗します。

サブスクで成功するモデルの例で、このようなエピソードがあります。

ある会社の方にフレンチをごちそうになったことがあるんですが、その方は食事をした後、お会計をしないでお店を出たんです。

その方に理由を聞いてみると、あるフレンチレストランのサブスク会員になっているとのことでした。

サブスクの会費は月10万円、会員が50人だそうです。

計算すると店舗には月500万円の売上が安定的に入ってきていることになります。

一方、通常営業だった場合、キャパシティは10席程だとすると、2回転で20人になります。

営業日数が25日だと最大でも500人、常時満席かつ単価1万円で、サブスクと同額の売上です。

実際には、常時満席なんてありえませんから、このケースだとサブスクの方がお店には有利になります。

お客様にとっても「僕の行きつけの会員制フレンチ」とステイタスを感じさせるために、効果的な手段だといえます。

儲けだけでないパターンのサブスク活用

しかし、サブスクそのもので儲けが無くても、やってみてもいいパターンもあります。

多くのサブスクには有効期限がありますよね。

そのため、期限内は基本的にお客様を同業他社に奪われることがありません。

つまり、お客様の囲い込み戦略として有効なのです。

例えば美容院で髪を切り放題というサブスクを販売したとします。

髪を切る回数の平均値を想定すると月1回くらいでしょうか。

年間12回を平均として、通常のカット料金が4,000円だったら、12回×4,000円で4万8000円です。

年間4万円のサブスクにすれば、通常の料金で来ていただくお客様とそれほどの売上の差は有りません。

むしろ売上は下がっているように見えますが、1人の顧客が安定して1年通ってくれることで、新規顧客獲得のための広告投資も必要がなくなります。

その間に追加メニューを購入してくれれば、それ以上の収益にもつながります。

サブスクだから儲かるわけではなく、成功するビジネスモデルを効果的に活用すること、儲けだけでない効果を期待して実行することが大切というお話でした。

こういった知識も、経営のヒントになります。

要素分解の注意点

要素分解をする時の注意点は?

要素分解ができるようになると、経営課題の解決に大きく貢献してくれます。

ただ、要素分解には気を付けるべきことがあります。

インパクトと順序の見極め

分解した要素の中でも、改善した時にインパクトがあるのはどこかと、乗数効果を考えて優先的に取り組むべきなのはどこかを検討しましょう。

ネット広告を例にすると、広告費をたくさんかける前に、LPのコンバージョンレートや商談成約率を改善すべきであるとお伝えしました。

つまり要素分解の各要素には、どれから取り組むのが効果的か、順序があります。

正しく見極めることで、より効果的に経営改善をすすめることができます。

どこにフォーカスすればいいのか

要素分解でどこを詳しく見ていくかは、優位順位をつけましょう。

例えば、A事業、B事業、C事業の3つの事業を展開している会社があるとします。

  • A事業:既存顧客が多く、売上も多い
  • B事業:現状は顧客が少ないが将来性はある
  • C事業:本業のついでにやっている

この場合、どれを優先して要素分解していくべきでしょうか。

金額の大きいものが優先

まずは金額的な重要性を見ることです。

どうしても、現在の売上の多くを占めているA事業次第で、会社の業績は大きく変わってくるものです。

これから伸ばしたいものも優先

特に、社長がこれから伸ばしたい事業だとか、注力したい、解決したいと考えている課題の部分も、フォーカスしていくべきです。

これは、社長や経営陣によって異なる部分かもしれませんが、知りたい部分はより数字の声を聞いた上で、意思決定をしていくべきです。

その要素を優先する場合のコストも考慮する

次項でもお話しますが、要素分解は果てしなく細分化できます。

だからこそ、どこまで要素分解するのがいいのか「費用対効果」を考えながら行う事が大切です。

現在好調なA事業ですが、世の流れをみると衰退していくので、B事業に軸足をシフトしていかないとやばい、という場合にはB事業をより詳細に要素分解していく。

副業のつもりのC事業が意外に延びてきたら、C事業をしっかりみていく、というようにその時々で、社長が見たいものにフォーカスしていくことも大切です。

費用対効果を考える

要素分解はどこまででも可能ですが、社長が要素分解ばかりして本来の業務がおろそかになったり、要素分解のための数字をもとめるあまり経理部門が疲弊したり、計測を何度も現場に要求して本業に負担になったりしては本末転倒です。

たとえば、システムで客数がすぐに入手できる場合は良いのですが、あまりに要素を細分化しすぎると、その数字を入手するために、新たに毎日の来客数をカウントし始めるなど、コストがかかる場合があります。

費用対効果を考えて、数字の声を聞く重要性と、数字を入手するためのコストを比較して、判断する必要があるでしょう。

要素分解で起きる変化

要素分解ができるようになると、どのように変わるのでしょうか。

要素分解ができるようになると、様々な変化が起こります。

「根性論」からの脱却

要素分解は「適切な質問を作る」ためのツールともいえます。

例えば、売上が落ち込んでいる際、A事業、B事業、C事業の3事業に要素分解すれば、どの事業が最も下降しているのかがわかります。(表1)

スクロールできます
前期当期
A事業7,000万円4,700万円
B事業1,000万円1,500万円
C事業2,000万円1,800万円
1億円8,000万円
表1 事業ごとの売上

最も下降しているA事業の担当部長に「下がっている理由は?」と質問できますが、このくらいのことは、現在もおこなっているかもしれませんね。

ただし、要素分解が浅いと、担当部長の答えは「理由はがんばりが足りないからです」「みんなの努力不足でした」「じゃあがんばれよ」といった中身のない会話になってしまいます。

しかし、要素分解を深めていくと、会話が変わってきます。

「どうして客数は変わらないのに、単価が落ちているんだろう」

「客数も、営業を多く採用しているのに、なぜ単価が増やせていないんだろう」

といった「原因は何か」を追及する分析的な会話ができるのです。(図2)

図2 完成度の高いA事業の要素分解
図2 完成度の高いA事業の要素分解

原因が何かがわかれば、「同業が安売り攻撃をかけてきたなかで、客単価をどうやってテコ入れしようか」「営業が生産性を上げるために何ができるか」など、適切な対処を考えていくことができます。

要素分解によって理由を数字に聞いていけば、社長は「とにかく死ぬ気でがんばれ」というように従業員を追い詰める必要もなくなります。

さらに、適切な対処を早く講じられるようになって、無用な不安から解放されることにもつながるのではないでしょうか。

社長自身がブラッシュアップされる

次に何をすべきか、社長は常に考えなければいけません。

「要素分解していかないと適切な行動の仮説は立てられない」と私は考えています。

要素分解をしていくと、得られる情報がより細かく、量も増えていきます。

そのたくさんの情報のなかから何を選ぶのか、優先順位を考えていくことで、経営者の視点はより戦略的にブラッシュアップされていきます。

まとめ

これまでブログでは、経営改善をする手法の1つとして、要素分解を解説してきました。

本記事では、要素分解によってビジネスモデルを見た時に、どのようなアプローチが効果的なのかや、要素分解の注意点を解説しました。

今回ご紹介した内容も、ぜひ経営改善に活かしていただければ幸いです。

ただ、記事を読んだだけで実践するのは難しいと思われる方は、はぎぐち公認会計士・税理士事務所の無料相談へお気軽にお問い合わせください。

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