融資の審査において、評価のベースとなるのは「未来」ではなく、「過去」
融資の審査において、金融機関が最も、審査の比重を置く情報として、「決算報告書」というものがあります。確かに、未来の事業計画も大切ですが、金融機関がもっとも重視するのは、その企業の「過去」です。
なぜなら過去は、証拠資料があり、嘘がつけないからです。まずは、確固たる事実・実績としての過去を評価したうえで、その企業の格付けや与信が基本的に決定されます。
その上で、事業計画として、将来何を目指しているのか、どのような事業投資をしようとしているのか、という部分が追加的に評価されます。
「過去をみる」際に、既存の企業であれば、毎年1回決算・申告義務があり、毎年税務署に、「税務申告書」「決算報告書」を提出しているはずです。ですので、既存の企業の「過去」を見る場合、税務署に提出している「税務申告書」「決算報告書」の提出が求められます(その他、納税の証拠としての「納付書」も日付印とともに確認されます)。
創業経営者の「過去」とは
しかし、創業融資においては、何しろ、その企業の過去を物語る「税務申告書」「決算報告書」がありません。
そうなると、創業経営者にとっての、「過去」とは何でしょうか。
決算書のない創業の経営者の「過去」について、多くを知り得る手がかりとなるのは、
①「自己資金」
②「経営者の経歴(職歴)」
がその大きな部分を占めるということになります。
金融機関が創業融資の際に、審査に重きを置くのは、上記の2点です。
自己資金がほとんどないのに、「リスクはあるけど事業を立ち上げて一勝負したいので、お金を貸してください。」というのも、客観的にいかがでしょうか。
また、たとえば公認会計士・税理士としてのキャリアを重ねてきた私が「会計事務所を開業したい」といえば、ある程度それなりの事業になりそうですが、「ラーメン屋さんを開業したい」といえば、「ご経験はあるのですか?」と真っ先に言われるのは、明らかでしょう。
ですから、創業融資を成功させるためには、「自己資金」と「経営者の経歴」について、金融機関がどのような点に注目してくるのか、評価されるポイントは何なのか、資料としてどのようなものを提出する必要があるのか、また欠点がある場合にどう補っていくべきなのか等について、事前に知っておくことで、融資獲得の可能性は大きくUPするということがいえるかと思います。
次回以降、「自己資金」についてや、「経営者の経歴」についてより詳細に述べていきます。