前回で創業融資の際の2大重要ポイントが、「自己資金」と「経営者の経歴」であるということを述べました。
今回のブログでは、「自己資金」について、詳しく述べていきたいと思います。
自己資金とは、開業にあたり創業経営者が独自に準備してきたお金のことをいいます。
金融機関が評価するのは、自己資金の「残高」と「蓄積の履歴」です。
■自己資金「残高」から評価されること
「自己資金」残高がいくらあるのかによって、色々なことが分かります。
・創業のために、どのくらいコツコツと準備を進めてきたのか。【計画性】
・独立できるほど、実力がある人なのか~どのくらい稼いできた人なのか【稼ぐ力】
・どのくらい貯めてきた人なのか【貯める力】
「自己資金」といえば、その残高が大切だと考えられている創業経営者がとても多いです。しかし、「自己資金」の確認において、金融機関に確認されるのは、残高だけではないのです。
■自己資金の「貯蓄の履歴」である通帳から評価される「創業経営者の過去」
実際の審査では、「自己資金」のエビデンスとして、「通帳」の原本の提出が求められます。「通帳」は、自己資金の残高以上に、色々なことを物語ります。そして、「過去」ですから、書き換えすることができません。
(通常、過去から独立時の融資まで考慮して、通帳をきれいにしておく人はほとんどいません。ですから、融資申し込みのタイミングで、「ヤバッ」となってしまうことが多いのは事実です。)
自己資金の履歴である「通帳」は、以下の視点からチェックされます。
・毎月の引落は、規則的に引き落とされているか【お金へのルーズさ(債務観念)】
・他人との金銭の貸し借りなど、異常な金銭のやりとりはないか【異常性】
・自己資金は、コツコツ前職から蓄積してきたものかどうか【蓄積過程】
・どんなことにお金を使っている人なのか【習慣】
・創業融資の直前に、友人等から一時的に振り込まれている「見せ金」(※)でないかどうか【自己資金の実在性】
このようなことからは、通帳を提出したくないと思われるかもしれませんが、通帳がないというのはそれ自体が異常ですし、「蓄積過程が確認できなかった」という評価になってしまいます。基本的には、通帳を提出し、その履歴をチェックしてもらわなくてはならないとお考えください。
パーフェクトな通帳をお持ちの創業経営者というのは、ほとんどいません。ある程度の指摘があっても合理的な説明ができるようであれば問題ありませんので、過度に気にしすぎる必要はないかと思います。
※「見せ金」とは、自己資金がない経営者が、一時的に親族や友人から、資金を借りて、通帳記帳をした後にすぐに資金を返還するというような取引をいいます。
資産としての実体のない「見せ金」について、金融機関は、懐疑心を持って通帳を確認します。例えば、融資の面談の前日に、知人からの振込や現金入金が●百万円あったりする場合には、「このお金は、何ですか?」と、金融機関の担当者に質問されることになります(当然、「これは、おそらく見せ金ではないか」という懐疑心をもった質問になります)。
■自己資金と融資額のバランス
「自己資金が仮に300万円あれば、いくらまで借りられるのか」などという質問をよくいただきますが、自己資金の何%までなどという明確な上限はないと理解してください。
ただし、年間100件近い融資をこなす中で、やはり実務上の目安というものもございます。大体の目安としては、創業融資の借入可能金額としては、
自己資金の2~3倍
というイメージと捉えてください。例えば、創業当初にかかる支出金額(設備投資+運転資金3か月分)の30%ほどは、自己資金で準備しておく必要があると考えてください。
■創業融資の上限金額
創業融資の融資金額は、自己資金との比率によって変わってきますが、だいたい300万円~1,000万円というのが通常です。
創業ということは、金融機関からすると、新規の顧客ということになります。お金を貸すという行為は、「信用」が前提になるので、まだ取引実績や過去の業績もない創業者に貸せる金額というのは、限度があります。
創業で1,000万円借りられれば、相当程度、評価してもらっていると考えてよいかと思います。
弊社の支援先で、創業でお客さまが2,000万円借入するのをご支援したこともありますが、公庫の方も「創業で2,000万円借りた方は、はじめて見ました!」と、おっしゃっていました。
※多額の融資を受けられる会社になるために
金融機関が、その経営者にいくらまで貸せるかという評価を「与信」といいます。創業期は、「与信」に限りがありますが、「与信」は育てていくものです。
「与信」を育てていくには、いくつかのポイントがあります。
・借りるタイミング
・いつ、どこから借りるか
・決算と融資の関係
・成長フェーズと付き合うべき金融機関
これらについては、また、別の機会に取り上げていきたいと思います。