■テーマ いざ起業!個人事業主から法人化のメリット・デメリット
今回のテーマは、 起業する際に決断するべき大きなテーマになりますので、
しっかりと長短を理解したうえで自身の事業に適した決断をしたいですね。
■個人事業主から法人化のメリット・デメリットを徹底比較
個人事業主として開業するのと法人を設立するのには、それぞれで有利な点と不利な点があります。
どちらで事業をスタートするのかは、あらゆる面での有利・不利を把握してから判断しましょう。
■税務・コスト面でのメリット・デメリット
以下は、個人事業主と法人の税務・コスト面からの有利不利の比較表となります。
概観をつかんでいただくのが一番の趣旨ですので、個々の詳細は、述べないことにします。
また、○の数が個人事業5個、法人3個となりましたが、○の数では有利不利は決まりませんので、ご了承ください。
個人事業主 | 法人 | |||
①設立費用 | ○ | ゼロ | × |
株式会社で25~30万円
合同会社で10~15万円 |
---|---|---|---|---|
②経理・税理コスト | ○ |
より簡単
税理士費用はゼロか安い |
× |
より複雑
税理士費用がよりかかる |
③経営者の給与 | × | 経費にならない | ○ | 経費になる |
④生命保険の経費化 | × | 節税余地は小さい | ○ | 大きな節税が可能となる |
⑤赤字の繰越 | × | 青色申告を条件として3年 | ○ | 青色申告を条件として9年 |
⑥赤字の場合の課税 | ○ | ゼロ | × | 最低7万円 |
⑦社会保険料のコスト | ○ | 強制適用ではない範囲が広い | × | 社会保険が強制適用 |
⑧交際費 | ○ | 制限なし | × | 一部制限あり |
一言でまとめると、法人は「(1) 運用にコストがかかる一方で、(2) 経費が計上しやすい」ということになります。
ですから、一定規模以上の課税所得(≒利益)が出ている場合には、
(1)のコストよりも(2)の経費による節税効果が高くなって、有利ということになります。
例えば、個人事業で、売上2,000万円、経費800万円の方の所得税は、
事業所得1,200万円に青色申告特別控除65万円と
基礎控除48万円のみを考慮すると、課税所得1,087万円となり、
所得税:1,087万円*33%-1,536,000円=2,051,100円となります。
(※計算上の細かい論点は省きます。)
この個人事業主が、法人を設立し社長になった場合どのようになるでしょうか。
会社の売上2,000万円、経費800万円の他に、
月100万円の役員報酬を社長自身に支払ったとします。
この場合、
・法人の課税所得:
1,200万円-100万円*12か月=0万円 ⇒均等割7万円だけはかかる…A
・社長の所得税:
役員報酬は給与所得控除が使えるので、
社長の給与所得:1,200万円-195万円=1,005万円
課税所得:1,005万円-基礎控除48万円=957万円
所得税は、957万円*33%-1,536,000円=1,622,100円…B
AとBの合計が1,692,100円となります。つまり、個人事業の場合の所得税2,051,100円と、
法人化した場合の課税所得と所得税の合計1,692,100円を比較すると
法人化によって35万9千円の節税効果が出ています。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円 から 1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円 から 3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円 から 6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円 から 8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円 から 17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円 から 39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円 以上 | 45% | 4,796,000円 |
引用元: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm
給与等の収入金額(給与所得の源泉徴収票の支払金額) | 給与所得控除額 |
1,625,000円まで | 550,000円 |
1,625,001円から 1,800,000円まで | 収入金額×40%-100,000円 |
1,800,001円から 3,600,000円まで | 収入金額×30%+80,000円 |
3,600,001円から 6,600,000円まで | 収入金額×20%+440,000円 |
6,600,001円から 8,500,000円まで | 収入金額×10%+1,100,000円 |
8,500,001円以上 | 1,950,000円(上限) |
引用元: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1410.htm
これは、「比較表の③:経営者の給与が経費になる」という要素を使っただけで、
社長の取分は年間1,200万円のままです。
それでも、これだけの節税が可能となるわけです。
一度きりの設立費用や、多少の税理士費用の増額が
あったとしても十分にメリットがありますね。
法人の場合は、この他にも、法人と個人での所得分散や
生命保険など他の節税効果を使えば、より大きな節税ができる余地があります。
税務メリットの最適化は、消費税のこと、個々人の所得控除のこと、
来期の見通しなど様々な要素に応じて変動してきますので
一概に「いくら以上の所得が出たら法人化が有利」とは言い切れませんが、
事業から多くの所得が出るにつれて、法人化の優位性が増してくる
ということだけは押さえておいて頂きたいと思います。
■資金調達上のメリット・デメリット
銀行から融資を受ける際、会社の方が個人事業よりも
有利なのかというご質問をよくいただきます。
確かに、会社の方が、経営者の公私財産の区別が明確であり、
より厳密な経理処理が求められる点で信用度が高いと言える要素もあります。
しかし、最近ではそこまで大差はないと考えられます。
以前は、株式会社であれば最低資本金1,000万円というハードルがあったため、
確かに、株式会社といえば自己資金等で1,000万円は工面した経営者という
信用性があったのですが、今は株式会社も資本金1円から作れるのですから、
「会社」=「信用が高い」という図式は成り立たなくなっています。
創業融資でみられる大きな要素として「自己資金」がありますが、
極端にいえば、資本金1円で経営者の個人資金10万円の株式会社よりは、
自己資金で1,000万円持った個人事業主の方が信頼性は高く、
融資も受けやすいというのは直感的にも理解できると思います。
ですから、融資を受けるために会社化しようと決定するよりは、
もっとほかの要素を重視して決定した方がいいです。
一方で出資を受ける場合は、会社が前提となり、会社化は必須となります。
■税務以外でのメリット・デメリット
続いて、税務・資金調達以外の観点から個人事業主と法人の比較をしますと、
なんといっても「社会的信用」という要素が挙げられます。
社会的信用は、やはり会社の方が高いと言えます。
これは大きな考慮事項です。
例えば、大手の会社などと取引するには、会社(場合によっては、
資本金いくら以上等の要件がつく場合もある)でなくてはならず、
個人事業主とは取引してくれない会社もあります。
また社会的信用という要素をより広範に捉えれば、
人材の採用などにも影響すると考えられます。
ですから、法人化による社会的信頼姓の付与という要素は、損得を数値化できませんが
非常に大きな考慮要素になると思います。
■事業開始手続きでの違い
事業開始手続きが簡単なのは、断然「個人事業主」です。
開業届を税務署に提出するのみで完了するため、煩雑な手続きもなく、すぐに事業を始められます。
一方の法人設立では、さまざまなステップを踏んで手続きを進めなければなりません。
【法人設立のためのステップ】
- 法人の種類を選ぶ
- 会社名や屋号を決める
- 定款や概要を定める
- 社印を作る
- 資本金を払い込む
- 役員の報酬額を決める
- 登記の手続きをする
- 法人設立届を提出する
- 青色申告の承認申請書を提出する
- 給与支払い事務所等の開設届出書を提出する
- 「納期の特例の承認」(源泉所得税)に関する申請を出す
- 健康保険・厚生年金保険の新規適用届を出す
参照:https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/touki2.html
ざっと見ただけでも、法人設立には手間と時間がかかることが分かりますね。
ただし、法人ならば株式会社だけでなく、NPO法人や一般社団法人などとして設立することも可能です。
■個人事業主と法人のメリット・デメリットまとめ
さまざまな面で有利・不利がある個人事業主と法人。
ご紹介してきた内容を、それぞれのメリット・デメリットとしてまとめました。
■個人事業主のメリット・デメリットまとめ
個人事業主として開業する場合の主なメリットとデメリットは下記のとおりです。
【メリット】
- 手続が簡単で費用がかからない
- 即日でも開業できる
- 経理や税務処理がそこまで難しくない
【デメリット】
- 経営者の給与が経費にならない
- 青色申告でも赤字の繰越が3年しかできない
■法人化のメリット・デメリットまとめ
法人を設立する場合の主なメリット・デメリットも、見てみましょう。
【メリット】
- 社会的信用度が高い
- 経費として計上できるものが多い
- 融資を受ける際に有利になる場合がある
【デメリット】
- 法人設立の手続きに手間と費用がかかる
- 設立までに数週間以上の時間がかかる
- 経理や税務処理に手間がかかる
■個人事業主から法人成りも検討の余地あり
税金の面で見ると、一定所得までは個人事業主のほうがお得なケースが多いです。
そこで、一定所得を超えるまでは個人事業主として事業を展開し、所得額が多くなってきたら法人として設立するのも良いでしょう。
ただし、個人事業主が良いのか法人が良いのかは、前述したように様々な要素によって決まります。
そのため、一概に収入が増えたら法人化するのが効果的とは言えません。
一般的には、法人のほうが税率が低くなる年間所得700~800万円ほどが、法人化を検討するタイミングとされています。
そのほか、金融機関からの融資が必要になったタイミングで法人化を検討しても良いでしょう。
■適した事業形態を選ぼう
税務面だけを考慮すれば、「利益がいくら以上になったら法人化した方が得」
というような正解のようなものがあるとも言えます。
しかし、個人事業主か法人化するかについては、社会的信用など 税務以外の要素も考慮したうえで、適切な判断をする必要があります。
■弊社の設立サービスは、以下の5つの点で、お客様にとって価値の高いものとなっております。
有利な点①:無料相談
まずは、法人化のご相談を「無料」で45分間承ります。「個人事業」OR「法人化」の有利不利について、税務面・税務以外の面から検討いたします。そのうえで、「個人事業」が有利であれば、無理に法人化を勧めることはありません。
有利な点②:安い~自分でやっても、弊社に頼んでも同額です。
ご自分で登記した場合と同額でサービス提供ができます。都内であれば株式会社で「約24.8万円」ほどになります。
キャッシュバックなどがあるサイトとは異なり、長期顧問契約が前提ではありません。まさに、創業者応援価格です!
有利な点③:税務の専門家だから、客観的かつ適格
税務の専門家が判定するので、手続きだけを実施する「司法書士」「行政書士」とは税務判断やシュミレーションの質が全く異なります。そして私たちは、設立登記がメインビジネスではありませんので無理に設立が有利という結論を導いたりはしません。お客様にとって有利な選択をお伝えすることができます。
有利な点④:創業支援の専門家
弊社は創業支援に特化しているので、創業や設立に関しては、他の「会計事務所」とも、経験の数が異なります。弊社で扱ってきた多くの創業経営者の事例から得られた経験に基づき、創業者を適切に導くことができます。
有利な点⑤:創業に関するワンストップサービス
個人開業・法人化のことだけでなく、創業・事業に関するお悩みをなんなりとご相談ください。「資金調達」「助成金・補助金」「各種届出」「会計・税務」などについてワンストップでお悩みにお答えするため、多くの相談者に「創業までの道筋が一気に明るくなりました」「頭の中が整理できました」と言っていただいております。