法人化にあたって悩むことの一つに、株式会社にするか合同会社にするかという話題があります。
そもそも、株式会社にするのと合同会社にするのは、どのように異なるのでしょうか。
そこで今回のテーマは、「株式会社と合同会社を選ぶにはどうするか」です。株式会社と合同会社では何が違うのかに焦点をあてて、解説していきます。
【この記事を読んで欲しい人】
- 法人化したいけど、株式会社と合同会社どちらを選ぶべきか迷っている経営者の方
- 法人化をするなら、慎重に判断してリスクを減らしたいと考える経営者の方
【この記事のポイント】
- 株式会社は、所有と経営が分離されており、株数に応じた発言権がある。利益は株数に応じて配当される。
- 合同会社は、所有と経営が一致しており、出資額に関わらず発言権がある。利益は出資額に関わらず分配され、割合も決められる。
- 株式会社は、社会的信用と資金調達力を持つにはよい。また、将来上場を目指しているなら、株式会社にしなければならない。しかし、合同会社より設立費用が高いのと諸費用もかかる。役員任期も最大10年までになる。
- 合同会社は設立費用が少なく済み、株式会社に比べコストは低くなる。役員の任期も特にないので、自らの意思が経営に反映しやすい。ただし、複数人経営の場合、意思決定でもめる可能性がある。また、外部からの資金調達で株式が使えないため、資金調達のルートが限られる。さらに、社会的信用も株式会社に比べると低くなる。
- 社会的信用を高め、大企業と仕事をしたり、資金調達の方法を幅広く持ちたい場合、将来的に上場したい場合には株式会社にするのが適切。
株式会社と合同会社の違い
株式会社 | 合同会社 |
---|---|
所有と経営の分離 | 所有と経営の一致 |
株数に応じて1票 | 出資額に関わらず1票 |
利益は株数に応じて配当される | 利益は出資額に関わらず分配される |
株式会社と合同会社の大きな違いは、所有者と経営者が分離していることです。株式会社の場合、会社の所有権は株主にあり、持っている株数が持ち分になります。経営者は株主とは分かれていて、基本的に代表取締役として会社経営の業務執行をしていく人は別にいます。一方、合同会社は、出資者と経営者が一致します。合同会社はお金を出した人が会社の所有者になります。
続いて、会社に対する発言権も、株式会社と合同会社では異なります。もし、会社のオーナーと社長が同じだったり、一人で経営をするのであれば、合同会社でも合資会社でも大差ないのですが、株式会社なら持っている株数に対して一票になるので、多く株を持つ人が発言権が強い事になります。株主総会で何かを決める時には、51%以上の株を持っている人がいれば、多数決でその人の意見が通ることになります。合同会社は出資額に関わらず、一人一票なので、その点が大きく異なります。
利益が出た時の配当の扱いも両者で異なります。利益が出たら、株数に応じて配当されるのが株式会社、出資額に関わらず利益が分配されるのが合同会社になります。合同会社だと、定款で利益の分配について規定をしておけば、利益の分配を自由に決めることができます。例えば、資金力はあるがノウハウがなかった企業と、資金力は無いが重要なノウハウを持っている人が共同で合同会社を創るとなった場合に、出資額に関係しない比率で利益の分配を規定しておくことが可能です。そうすれば、企業が出資をたくさんしたからといって利益をとられることはありません。
株式会社では、出資金額(保有する株式数)に応じて、利益の配当が与えられます。そして、株主総会での発言権は株式数に比例して決まることになります。
もし、出資している人が一人で代表取締役社長になり、それ以外に経営者が入ってこない場合であれば、株式会社でも合同会社でも変わりません。
しかし、多数で出資したり経営を分担している場合には、株式会社にするか合同会社にするかどちらを選ぶかで状況は大きく異なります。
ここからはさらに細かく、株式会社と合同会社の違いを、設立時の費用や認知度などでまとめてみました。
株式会社 | 合同会社 | |
---|---|---|
設立費用 | 24万円 | 10万円 |
役員任期 | 2~10年 | 任期は特になし |
認知度 | 高い | 低い |
社会的信用 | 高い | 低い |
上場 | 可能 | 不可 |
所有と経営 | 分離 | 一致 |
この表をみると、株式会社の方は合同会社よりも認知度が高いことがわかります。正直、合同会社と聞いてもピンとこない人が多いのではないでしょうか。やはり、一般的に知られているのは株式会社の方なので、社会的信用度も株式会社の方が高くなります。
また、株式会社の場合、株を発行して効果的に出資を得ることができます。株主は株を買って出資をしても、出資以上の責任を負わなくてよいので限定的なリスクで投資ができるメリットがあります。
ただし、株式会社は会社設立費用が24万円と10万円で違います。会社設立のための手続きもたくさんあり、決算公告の義務もあります。決算公告とは、会社の成績や財務の状況を株主に公開・報告することです。これは官報にも掲載しますが掲載料が必要です。コスト面でいうと株式会社の方が費用がかかります。
また、役人の任期でいうと、株式会社の場合は最大10年です。任期を超えて経営に関わり続けることはできません。株式会社は株主の意見が重要になり、株主が増えるほど一部の人だけで経営の舵をきる事はできなくなります。
一方で、合同会社は任期の期限がありません。そのため、出資者であるうちはずっと、役員として経営者を続けることができます。会社のオーナーと出資者が同じで経営にも携わるので、意思決定がスピーディーです。決算公告の義務もなく、株式会社だと必要な書類の提出義務もありません。
また、利益の分配も、株式会社の場合は株主に分けなければいけませんが、合同会社は出資比率に関わらず自由に決めることができます。
ただし、合同会社の知名度は株式会社よりも低いので、認知度・信用度にはウイークポイントとなる可能性があります。また、オーナーが一人なら良いですが、複数で経営をする場合お互いの権利が対等なので、意思決定の面でもめる可能性があります。
さらに、合同会社の場合株を使った資金調達ができないので、金融機関からの借り入れや自治体からの助成金にルートが限定されてしまいます。
株式会社か合同会社かの判断は?
株式会社が適している場合
- 自己資本以上の出資が必要
- 株式で出資を得て事業をしたい
- 大企業を相手に事業がしたい
- 社会的知名度、信用力を高めたい
例えば、上記のような考えを持っている場合には、株式会社を選択するのがよいでしょう。一方で、合同会社が適している場合は、
- 出資額に関わらず利益を分配したい
- 経営でスピーディーに判断し、自分が決裁権を持ちたい
- 対外的な認知度をさほど求めていない
- 小規模に事業をしたい
といった考えを持っている場合は、合同会社がよいでしょう。
これまで紹介した、株式会社と合同会社の違いをふまえ、どちらが良いかを選択する材料にしてみてください。
まとめ
今回は、法人なりを考える第三弾として「株式会社と合同会社を選ぶにはどうするか」を解説してきました。
株式会社と合同会社の違いをよく理解し、選択するのに役立てば幸いです。
法人化するかどうか判断する方法については、他の記事もご参照いただければと思います。
とはいえ、記事を読んだだけでは判断がつかないと感じられる方は、はぎぐち公認会計士・税理士事務所の無料相談へお気軽にお問い合わせください。