資産管理会社を設立する目安は?会社の作り方やメリットデメリットも解説!

目次

資産運用を始めてすぐはさほど意識しないかもしれませんが、運用規模が大きくなるにつれて、税金対策や効率的な管理が重要になってきます。このような課題を感じ始め、資産管理会社の設立を検討している方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで本記事では、資産管理会社を設立するメリットやデメリット、設立の流れについて分かりやすく解説します。会社設立を迷っている方や、検討したい方はぜひ参考にしてみてください。

資産運用で管理会社を設立すべき人とは?

吾輩は猫である。名前はまだない。どこで生れたか頓と見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。

個人の投資

まずは、個人投資家です。資産管理会社を設立する理由は、税制上の優遇を受けやすくするためです。個人の場合、所得に応じて最大55%の税金が課される累進課税制度が適用されますが、法人税率は課税所得800万円以下で15%、超過分に対しては23.2%と低く(2024年12月時点)、税負担を大幅に軽減できます。また、生命保険料や住宅関連費用など、個人では経費に含められない支出が法人では経費計上可能になる点も理由です。さらに、法人化すればオーナーは役員報酬を受け取る給与所得者になり、厚生年金へ加入できるため、老後の保障が手厚くなるというメリットもあります。

オーナー社長

自社株を持つオーナー社長も、資産管理会社を活用するとメリットがあります。例えば、株の相続をする場合に有効です。資産管理会社が発行する株式を普通株式と無議決権株式に分け、後継者には普通株式を、それ以外の相続人には無議決権株式を分配します。無議決権株式は、議決権を持たない一方で財産的価値を有するため、相続人間の利害を調整しやすく、後継者が経営権を確保するのに役立ちます。この仕組みを活用すると、経営方針を巡る対立を防ぎ、事業承継を円滑に進められます。

相続税が発生する資産家

個人で多額の資産をもつ資産家にとっても資産管理会社が役立ちます。例えば、正味の遺産額が1億円の相続が発生した場合、相続税率は30%にものぼります。一方で、資産管理会社を設立し、家族に役員報酬として段階的に資産を移転すれば、贈与税や相続税を大幅に軽減できます(ただし、評価額の適正化や税務監査への対応を十分に考慮する必要があります)。個人では年間110万円の贈与非課税枠を超えると、最高55%の贈与税が課されますが、役員報酬を利用すれば、より低い税率で移転できます。また、不動産を資産管理会社名義で所有すれば、相続時に現金が不足して資産売却を余儀なくされるリスクを回避可能です。株式分割によるスムーズな資産承継が可能で、相続トラブルの防止にもつながります。

副業で資産運用をしている会社員

副業や資産運用で収益を得ている会社員も、資産管理会社を設立すべき人です。個人では経費として認められない支出も、法人にすることで経費計上が可能になる範囲が広がり、所得の軽減につながります。例えば、投資関連の書籍購入費やセミナー参加費、オフィススペースの賃料などを法人経費とすれば、所得税の減税が期待できます。また、家族を従業員として雇用し給与を支払うと、所得分散になり全体の税負担を軽減できます。

資産管理会社の設立で受けられるメリットは?

資産管理会社を設立するとどのようなメリットがあるでしょうか。本章では、会社を設立することで受けられるメリットを解説します。

税負担を軽減できる

資産管理会社を設立する最大のメリットの一つは、税負担を大幅に軽減できる点です。個人の場合、所得税は累進課税が適用され、所得が高くなるほど税率が上がり、最大で45%、住民税を加えると55%にも達します。一方、資産管理会社を設立すれば、法人税率が適用されるため、課税所得800万円以下では約15%、800万円を超える部分には23.2%と、全体の税負担が30%前後に収まるケースが多いです。そのため、実質的な税負担を抑えつつ、さらに資産を効率的に運用できます。 

所得を分散できる

資産管理会社を設立すると、所得を分散して税負担を軽減できます。個人で資産運用を行う場合、全ての収益が自分の所得となり、累進課税によって高額な税金が課される可能性があります。しかし、資産管理会社を設立すれば、会社の収益を給与という形で家族に分配して、累進課税の影響を軽減できます。例えば、配偶者や子どもを役員や従業員として雇用し、適正な給与を支払うと、税負担を効率よく抑えながら家族全体の資産形成を進められます。

欠損金を繰越控除できる

欠損金の繰越控除を活用できる点も、資産管理会社設立のメリットです。個人の場合、事業年度で赤字が出ても、翌年度以降の所得から赤字を控除することはできません。一方で、法人の場合は最大10年間にわたり、欠損金を繰越して将来の利益と相殺ができます。ただし、控除額には一定の制限がある場合があります(2024年12月時点での控除可能額は課税所得の50%まで)例えば、初年度に赤字が発生して翌年度以降に利益が出た場合、初年度の赤字を繰り越すことで翌年度以降の利益に課税される金額を減らせます。これは、資産運用の収益が不安定なケースでも、トータルの税負担を抑える上で大きな利点となります。

経費の範囲を拡大できる

経費の範囲を大きく拡大できる点もメリットです。個人での資産運用では、プライベートな支出に関しては経費として計上できませんが、法人化することで多くの費用を経費として計上できます。例えば、事業に関連する自宅の一部をオフィスとして使用している場合、家賃の一部や光熱費を経費にできるほか、法人としての活動に必要な通信費や交通費も経費として認められます。さらに、役員報酬や社会保険料、業務用の保険料なども経費として計上可能です。この仕組みにより、経費が増え、課税対象となる所得を減らすことができ、結果として税負担の軽減が期待できます。

資産管理会社の設立で受けるデメリットは?

資産管理会社の設立は、減税を期待できるメリットがありました。では一方で、資産管理会社設立には、どのようなデメリットがあるでしょうか。

会社の設立・維持コストがかかる

資産管理会社を設立するデメリットの一つは、設立および維持にコストがかかる点です。まず、会社設立時には登記費用や行政書士への報酬、印紙代などが必要です。設立後も、定期的な税理士への報酬や法定調査のための会計処理、決算報告書の作成費用など、維持にかかる費用が発生します。さらに、法人税の申告や社会保険料、法人住民税なども支払う必要があります。これらのコストが年間で一定額かかるため、特に規模の小さい資産管理会社では、事業規模や収益が少ない場合には負担となることがあります。そのため、法人化を決定する際には、これらのコストが投資額に見合うか慎重に判断することが求められます。

移転した資産は自由に使えなくなる

資産管理会社設立のデメリットのもう一つは、法人へ移転した資産が個人では自由に使えなくなる点です。例えば、個人が所有していた不動産や金融資産を法人に移した場合、その利用や売却には法人の承認が必要となり、個人の意思で自由に使用することはできません。また、法人の資産を個人の目的で使う場合には、法人からの貸付や配当を受け取る必要があり、税務上も慎重に取り扱う必要があります。このように、個人の資産運用がより複雑になり、柔軟な対応が難しい点はデメリットです。 

赤字を他の所得と通算できなくなる

事業で発生した赤字は、他の所得と通算できなくなる点もデメリットです。個人事業主の場合、個人事業で発生した赤字は他の所得(給与所得など)と通算することが可能でした。しかし、法人の場合、法人の赤字は法人内でのみ処理しなければなりません。個人の他の所得と相殺することはできず、法人の赤字は翌期に繰り越して法人税を減らす形になります。特に、法人化しても安定した収益が得られない場合は、税務面で不利益が生じる場合があります。 

資産管理会社を設立する流れは?

会社設立には多くの準備と手続きが必要ですが、段階的に進めるとスムーズに設立できます。資産運用会社を設立するための流れは以下のステップに分けられます。 

会社設立時の必要事項を決める

まず、資産運用会社を設立するために必要な基本情報を決めます。この段階で、以下の事項を決定します。

項目 備考
会社名(商号) 他の会社と同じ名前がないか、商標権に触れないかを確認。
事業内容 資産運用を行う目的に合致した事業内容を記載。
投資や不動産管理、株式運用などを具体的に定める。
会社の所在地 本店所在地を決定。事務所や自宅が拠点になる場合も。
資本金 資産管理会社の場合、最低資本金は定められていないが、実務上運用に必要な金額を設定。
役員構成 会社の代表者(代表取締役)や取締役、監査役などの役員を決めます。個人での設立でも法人での役員配置が必要です。

会社設立時に必要な書類を準備する

次に、会社設立に必要な書類を集めます。これらの書類は法務省に提出し、会社設立を完了するために必要です。

項目 備考
定款の作成 会社の基本的なルール。会社の目的や組織、決算方法、利益配分などの規定。定款には公証人役場での認証が必要。
印鑑証明書 代表取締役や役員の印鑑証明書を準備。
法人設立の際には、会社設立後に使う社印の印鑑証明が必要。
役員の就任承諾書 取締役や監査役がその職務を引き受けることを証明する書類。
資本金払込証明書 資本金を払い込んだことを証明するための書類。一般的に、銀行の口座を通じて資本金を入金し、その証明書を添付。
代表者の本人確認書類
代表取締役の運転免許証やパスポートなど本人確認書類が必要。

役所へ届け出る

書類が整ったら、法務省に届け出を行います。具体的には、法務局に「登記申請」を行い、資産運用会社として法人登記を完了させます。登記には以下のステップがあります。

  1. 定款の認証
  2. 登記申請書の提出
  3. 登記完了

まず、定款を公証人役場で認証してもらいます。これは手数料がかかり、1万円程度の費用が必要です。続いて、必要な書類(定款、役員の就任承諾書、印鑑証明書など)を揃え、法務局に提出します。法務局で登記内容が確認され、問題がなければ登記が完了します。登記が完了すると、会社は法人格を取得し、登記事項証明書が交付されます。この証明書をもって、会社が正式に設立されたことになります。登記申請後、通常1週間程度で登記完了通知が届きます。この通知を受けて、会社名や役員、所在地などが正式に認められ、事業を開始する準備が整います。

まとめ

本記事では、資産管理会社の設立を考えている方に向けて、会社を設立する流れや、設立のメリット・デメリット、手続きの流れを解説しました。

資産運用をしていて、資産管理会社を設立するか迷っていらっしゃる方にもわかりやすいよう、順を追って説明しておりますのでぜひ参考にしてください。

なお、はぎぐち公認会計士・税理士事務所では、資産管理会社設立に関するご相談も承っております。

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