法人化と法人税実効税率の関係・計算方法とは?わかりやすく解説

目次

法人設立は、事業拡大や経営の安定化、責任の明確化など、多くのメリットをもたらします。
しかし同時に、税金に関する制度も複雑になり、正確な税負担の把握が経営にとって重要な課題となります。
特に、法人税の実効税率と表面税率の違い、そして計算方法については、多くの経営者にとって分かりにくい部分です。
この記事では、法人税の実効税率と表面税率の違い、計算方法、そして注意点について解説します。

法人化と法人税の関係について解説

法人化のメリットとデメリット

法人化には、事業の信用向上、資金調達手段の拡大、個人資産の保護といったメリットがあります。
一方で、設立手続きの煩雑さ、税金負担の増加、経営責任の増加といったデメリットも考慮する必要があります。
法人化によるメリットとデメリットを比較検討し、自社にとって最適な経営形態を選択することが重要です。
特に税金面では、法人税だけでなく、法人住民税、法人事業税、特別法人事業税など、複数の税金を理解する必要があります。

法人税の基本

法人税は、法人がその事業活動によって得た所得に対して課される国税です。
税率は、法人の規模や所得によって異なり、中小法人(資本金1億円以下)の場合、所得が年800万円以下の部分は15%、800万円を超える部分は23.2%となります。
資本金1億円を超える法人や、大法人による完全支配関係にある法人は、所得額に関わらず23.2%の税率が適用されます。
赤字の場合は法人税はかかりません。

法人化による税負担の変化

法人化によって税負担がどのように変化するかは、事業規模、所得、所在地などの要素によって大きく異なります。
個人事業主の場合と比較すると、法人税、法人住民税、法人事業税、特別法人事業税といった税金が新たに発生します。
しかし、一方で、損金算入できる項目が増えるなど、税負担を軽減できる要素もあります。
法人化による税負担の変化を正確に予測するには、専門家への相談が有効です。
具体的な数値を用いたシミュレーションを行い、法人化による税金の影響を把握することで、より適切な判断を行うことができます。

※損金算入:経費として計上できる項目のこと。損金算入できる項目が増えるということは、税金計算上差し引ける金額が増え、税負担が軽減されることを意味します。

法人税の実効税率と表面税率の違いとは

表面税率の計算方法

表面税率は、税法上定められた各税金の税率を単純に合計したものです。
計算式は以下の通りです。

表面税率=法人税率×(1+地方法人税率+法人住民税率)+法人事業税率+特別法人事業税率

それぞれの税率は、法人の規模、所得、所在地によって異なります。
例えば、東京都に所在する資本金1億円以下の中小法人の場合、法人税率は所得によって15%または23.2%、地方法人税率は10.3%、法人住民税率は標準税率7.0%または超過税率10.4%、法人事業税率は所得によって3.5%~7.0%、特別法人事業税率は所得割額37%または収入割額30%となります。
これらの税率を上記の計算式に当てはめることで、表面税率を算出できます。

※地方法人税率:地方自治体が法人に対して課税する法人税に上乗せされる税率。都道府県と市町村でそれぞれ税率が設定されています。

※法人住民税率:地方自治体が法人の住民として課税する税率。法人税額を基に計算される税率(法人税割)と、資本金や従業員数などを基に計算される税率(均等割)があります。

実効税率の計算方法

実効税率は、法人事業税を損金算入した上で計算される税率で、実際の納税額に近い数値となります。
計算式は以下の通りです。

実効税率=(法人税率×(1+地方法人税率+法人住民税率)+法人事業税率+特別法人事業税率)÷(1+法人事業税率+特別法人事業税率)

表面税率と同様に、それぞれの税率は法人の規模、所得、所在地によって異なります。
上記の計算式に、それぞれの税率を当てはめることで実効税率を算出できます。

※実効税率:実際に支払う税金の割合を示す税率。表面税率とは異なり、法人事業税が損金算入された後の税率を指します。

表面税率と実効税率の比較

表面税率は税金の申告や納税額の計算に用いられる一方、実効税率は企業が実際に負担する税額をより正確に把握するために用いられます。
法人事業税が損金算入されるため、実効税率は表面税率よりも低くなります。
事業規模が大きくなるほど、両者の差は大きくなる傾向があります。
それぞれの税率の目的を理解し、適切に使い分けることが重要です。

法人化法人税実効税率計算方法と注意点

各税率の構成要素

法人税、地方法人税、法人住民税、法人事業税、特別法人事業税それぞれの税率は、法人の規模(資本金)、所得、事業所の所在地などによって決定されます。
特に地方税である法人住民税と法人事業税は、自治体によって税率が異なるため、注意が必要です。

※特別法人事業税率:地方自治体が法人に対して課税する事業税の一種。業種や規模によって税率が異なります。

法人税率の決定要因

法人税率は、法人の規模(資本金1億円以下の中小法人か否か)と所得によって決定されます。
中小法人の場合、所得が800万円以下の部分と800万円を超える部分で税率が異なります。
また、大法人による完全支配関係にある場合も、税率が変更されます。

地方税の税率と計算方法

地方税である法人住民税と法人事業税の税率は、事業所の所在地によって異なります。
さらに、同じ自治体でも、資本金や所得の額によって税率が変わる場合があります。
法人住民税は法人税割(法人税額に一定の税率を乗じたもの)と均等割(資本金や従業員数によって定まる額)から構成されます。
法人事業税は、事業区分、法人の種類、資本金の金額、所得額などによって税率が変動します。

※均等割:法人住民税の計算方法の一つ。法人の規模(資本金や従業員数など)によって一定額が課税されます。法人税額とは関係なく課税されます。

税制改正への対応

税制は毎年改正される可能性があります。
そのため、計算を行う際には、最新の税制情報を必ず確認する必要があります。
税制改正によって、税率だけでなく、税金の仕組み自体が変わる場合もあります。

計算ツールの活用方法

法人税の実効税率計算は複雑なため、計算ソフトや税務計算ツールなどを活用することで、正確性を高め、時間短縮を図ることができます。
多くの会計ソフトには、法人税計算機能が搭載されています。

税理士への相談

法人税の計算は複雑で、専門知識がないと正確な計算は困難です。
確定申告のミスを防ぎ、税金対策を適切に行うためにも、税理士に相談することが重要です。
税理士は税務に関する専門家であり、適切なアドバイスを受けることができます。

まとめ

この記事では、法人税の実効税率と表面税率の違い、計算方法、注意点について解説しました。
実効税率は法人事業税を損金算入した上で計算されるため、表面税率よりも低くなります。
計算には、法人税率、地方法人税率、法人住民税率、法人事業税率、特別法人事業税率が必要で、これらの税率は法人の規模、所得、所在地によって異なります。
税制改正にも注意が必要であり、最新の情報を常に確認することが重要です。
複雑な計算を正確に行うには、計算ツールや税理士の活用が有効です。
法人化を検討する際には、税負担の変化を正確に予測し、適切な判断を行うようにしましょう。
法人化によって税負担が増加する可能性があることを理解した上で、税理士などに相談し、将来的な税金対策を検討することが大切です。

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