起業は、大きな一歩です。
準備段階から多くの課題に直面し、その一つに法人口座の開設があります。
スムーズな事業運営のためには、法人口座の開設は不可欠と言えるでしょう。
しかし、手続きや注意点、そして様々な金融機関のサービスを比較検討するのは、容易ではありません。
法人銀行口座開設の手順
1:開設前の準備と確認事項
法人設立後、法人口座開設は急務です。
まずは、開設する金融機関を選びましょう。
都市銀行(例:三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行)、地方銀行(例:静岡銀行、広島銀行、福岡銀行)、信用金庫(例:東京信用金庫、大阪信用金庫)、ゆうちょ銀行、ネット銀行(例:住信SBIネット銀行、楽天銀行)など、それぞれ特徴が異なります。
手数料、サービス内容(例えば、振込手数料、ATM手数料、インターネットバンキング機能、法人カードの有無)、利便性(店舗のアクセス、営業時間、カスタマーサポート体制)、そして各行の法人向け営業担当者の対応の良さなども比較検討し、自社のニーズに最適な金融機関を選び出すことが重要です。
例えば、頻繁な現金取引を想定するなら、店舗網の充実した都市銀行や地方銀行が適しているかもしれません。
一方、オンライン取引をメインとするなら、手数料が安価で便利なネット銀行が向いているでしょう。
事業規模や取引頻度、利用するサービスなどを考慮して、最適な金融機関を選びましょう。
次に、必要書類を準備します。
多くの金融機関で、履歴事項全部証明書、印鑑証明書、代表者の方の本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)が求められます。
その他、定款の写し、法人設立届出書、事業計画書(事業内容、資金計画、収支計画などを具体的に記載)、オフィス賃貸契約書(登記済権利書のコピーなど)、代表者と会社の印鑑、会社の印鑑証明書などが求められる場合もあります。
金融機関のホームページで必要な書類を事前に確認し、漏れなく準備しましょう。
書類の有効期限にも注意が必要です。
特に、履歴事項全部証明書や印鑑証明書は発行日から3ヶ月程度の有効期限があるため、発行時期に注意が必要です。
※履歴事項全部証明書:法人が登記されたことを証明する書類。法人の住所、設立日、代表者名などが記載されている。登記簿謄本とほぼ同義。
※定款の写し:会社の設立に関する基本事項を定めた書類。会社の目的、資本金、役員などについて記載されている。
2:申込から審査までの流れ
必要書類が揃ったら、金融機関へ申込を行いましょう。
窓口での申し込みと、Webサイトからの申し込みの2つの方法があります。
Web申し込みの場合は、必要書類をオンラインでアップロードする必要があります。
オンライン申請では、事前に必要な書類をスキャンしてPDFファイルとして準備しておく必要があります。
申し込み後、金融機関による審査が行われます。
審査期間は金融機関によって異なり、数週間から1ヶ月程度かかる場合もあります。
近年は不正利用防止の観点から審査が厳しくなっている傾向にあるため、余裕を持って手続きを進めることをお勧めします。
審査中は、金融機関から追加書類の提出を求められる可能性もあります。
例えば、事業計画書の補足説明や、売上高の推移を示す資料の提出を求められるケースもあります。
審査に通過すると、口座開設が完了します。
通帳やキャッシュカードなどの受け渡し方法は、窓口での受け取り、郵送など、金融機関によって異なります。
金融機関からの指示に従いましょう。
※スキャン:紙の書類をデジタルデータに変換すること。画像として取り込むという意味。
3:口座開設完了後の手続き
口座開設後も、いくつかの手続きが必要です。
例えば、インターネットバンキングの利用開始手続きや、法人クレジットカードの申し込み、そして給与振込のための口座登録などがあります。
スムーズな銀行取引を行うために、これらの手続きも忘れずに行いましょう。
また、開設した金融機関のサービス内容を理解し、例えば、振込手数料の優遇制度や、資金管理ツールといった付加価値サービスを有効活用していくことが重要です。
※付加価値サービス:基本的なサービス以外の、付加的なサービス。例えば、振込手数料の優遇や資金管理ツールなど。

法人化による口座開設の注意点
1:必要書類の準備と提出
必要書類は、金融機関によって異なります。
事前に必ず金融機関のホームページで確認し、必要な書類を全て準備しましょう。
提出する書類は原本が求められる場合が多いので、コピーではなく原本を用意してください。
また、提出書類に不備があると、審査に時間がかかったり、最悪の場合、審査に落ちてしまう可能性があります。
例えば、代表者印鑑と会社の印鑑が異なる場合、事業計画書の内容が不十分な場合、などが審査に影響を与える可能性があります。
2:金融機関の選び方
金融機関選びは、事業運営に大きく影響します。
手数料(振込手数料、ATM手数料、口座維持手数料など)、サービス内容(インターネットバンキング、モバイルバンキング、法人カード、為替取引サービスなど)、利便性(店舗のアクセス、営業時間、カスタマーサポート体制など)、信用力などを考慮して、自社のニーズに合った金融機関を選びましょう。
取引先の多くが利用している金融機関を選ぶことで、振込手数料を削減できる可能性もあります。
メインバンクとサブバンクを分けて利用する戦略も有効です。
メインバンクには、主要な取引を集中させ、サブバンクには、特定の取引を委託するといった方法です。
※メインバンク:主要な取引を行う銀行。資金の出し入れや融資など、主要な金融業務を委託する銀行。
※サブバンク:メインバンク以外の銀行。特定の取引を委託する銀行。メインバンクの業務負担を軽減するため、または特定のサービスを利用するために利用する。
3:トラブルシューティングと解決策
口座開設の過程で、様々な問題が発生する可能性があります。
例えば、必要書類の不足、審査の遅延(審査期間が想定を大幅に超えた場合)、審査不合格などです。
問題が発生した場合は、すぐに金融機関に連絡を取り、状況を説明し、解決策を相談しましょう。

法人化と銀行取引の基礎知識
法人設立と銀行口座の関係
法人設立と銀行口座開設は密接に関連しています。
法人口座は、事業活動における資金管理に不可欠です。
法人口座がないと、売上金の管理、仕入代金の支払、税金の納付などが困難になり、事業運営に支障をきたす可能性があります。
そのため、法人設立後、できるだけ早く法人口座を開設することが推奨されます。
銀行取引における注意点
法人口座を使った銀行取引には、いくつかの注意点があります。
例えば、不正送金対策(パスワード管理、定期的な取引明細確認など)、経理処理の正確性(領収書、請求書などの適切な管理、会計ソフトの活用など)、税務上の処理(税務申告に必要な資料の保管など)などです。
これらの点を十分に理解し、適切な手続きを行うことが重要です。
特に、不正送金は大きな損失につながるため、注意が必要です。
便利な銀行サービスの紹介
多くの金融機関は、法人向けに様々な便利なサービスを提供しています。
例えば、インターネットバンキング(オンラインでの振込、残高照会など)、モバイルバンキング(スマートフォンアプリでの取引)、法人クレジットカード(経費精算の簡素化、ポイント還元など)、資金繰り支援サービス(融資、保証など)などです。
これらのサービスを有効活用することで、業務効率化や経費削減につながります。
各金融機関のサービス内容を比較検討し、自社に最適なサービスを選びましょう。
例えば、オンラインでの取引が多い企業であれば、インターネットバンキングやモバイルバンキングの機能が充実している金融機関を選ぶことが重要です。
まとめ
法人口座開設は、スムーズな事業運営に不可欠です。
今回は、開設手順、注意点、そして金融機関の選び方について解説しました。
事前に準備をしっかり行い、事業内容やニーズに合った金融機関を選択することで、円滑な口座開設を実現できるでしょう。
早めの準備と丁寧な手続きで、安心して事業をスタートさせてください。
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