キッチンカーでの飲食営業を法人化する目安は?失敗しないための判断基準と対処法を解説!

目次
この記事の監修

株式会社HG&カンパニー / はぎぐち公認会計士・税理士事務所代表取締役
公認会計士・税理士

萩口 義治(はぎぐち よしはる)

金融機関の格付け評価10段階中「最高評価獲得」
「経営革新等支援機関推進評議会」によって、表彰される全国TOP100会計事務所に選出

この記事の監修

株式会社HG&カンパニー / はぎぐち公認会計士・税理士事務所代表取締役
公認会計士・税理士

萩口 義治
(はぎぐち よしはる)

金融機関の格付け評価10段階中「最高評価獲得」
「経営革新等支援機関推進評議会」によって、表彰される全国TOP100会計事務所に選出

キッチンカーを運営していると、そろそろ法人化すべきか、法人化にはどんな手続きが必要なのか、と検索する方は多いはずです。税金面のメリットがあると聞くけれど、手間もコストも増えるのではないかと迷っている方も多いでしょう。

そこで本記事では、キッチンカーでの飲食営業を法人化するかどうかの判断基準から、法人化のメリット・デメリット、手続きの流れや、よくある失敗例と対処法まで、わかりやすく解説します。法人化すべきタイミングや、事業を拡大するうえでのヒントもありますので、法人化に迷っている方はぜひ参考にされてみてください。

キッチンカーでの飲食個人営業を法人化する目安

キッチンカーでの個人営業は、自由度が高く始めやすい反面、法人化を検討する時期に頭を悩ませる方が多いでしょう。そこで本章では、法人化を考えるべき目安を解説します。

年間利益が800万円を超えた時

キッチンカーでの営業利益が年間800万円を超えてくると、個人事業主として課される所得税率が大きく跳ね上がります。個人の場合、課税所得が900万円を超えると税率は33%にも達し、税負担が急増します。一方、法人化すれば一定の法人税率で利益を管理でき、節税効果が見込めます。例えば、材料費や移動用の車両代、従業員への給与、イベント出店費など、キッチンカーならではの多様な経費も法人では柔軟に扱え、結果的に手元に残るお金が増える可能性があります。また、役員報酬という形で利益を分散することもでき、家族経営のキッチンカーにも有利に働きます。

事業規模を拡大しようと思った時

複数台のキッチンカーを導入して多拠点で営業したり、スタッフを雇ってシフト制で出店したりといった事業規模の拡大を目指す段階では、法人化が大きな武器になります。たとえばイベント出店の増加や、フランチャイズ形式で別ブランド展開を考えた場合、法人格があることで取引先や行政との信用力が高まり、スムーズな契約や申請が可能になります。さらに、人材採用時の社会保険の整備、経費精算、車両のリース契約なども法人の方が有利に進められます。法人化によって「個人の屋台商売」から「組織的な移動型飲食ビジネス」へとステップアップする土台が整います。

他業種展開や長期経営を視野に入れた時

キッチンカーを単なる一時的な収入源ではなく、長期的に続ける事業として捉えるのであれば、法人化は重要な選択肢です。例えば、セントラルキッチンの設立や、店舗型のカフェへの進出、調味料や冷凍食品などの物販展開など、キッチンカーを起点とした多角経営を行うには、法人としての組織体制が不可欠です。さらに、法人であれば事業承継やM&A、外部資本の導入など、将来の出口戦略も視野に入れやすくなります。キッチンカーというフットワークの軽さを活かしつつも、継続的に成長するビジネスへと進化させるためには、法人化による経営基盤の強化が大きなメリットです。

キッチンカーでの飲食営業を法人化するメリット

売上規模や事業の拡大などで法人化を選択すると、どのようなメリットがあるでしょうか。本章では、キッチンカー経営者が法人化することによって得られるメリットを紹介します。

ガソリン代計上などで節税効果が期待できる

キッチンカーでの営業利益が安定して数百万円を超えてくると、個人事業主のままだと所得税・住民税・事業税などの税負担が大きくなります。法人化すれば、一定の法人税率(中小企業なら約23%以下)で収まるうえ、役員報酬として所得を分散させることが可能です。さらに、キッチンカーならではの経費、車両維持費やガソリン代、調理器具、出店料、イベント広告費、冷蔵機器の電力コストなども、法人として計上しやすくなります。また、家族を役員にして給与を支払うと、所得分散による節税もできるため、節税面でのメリットは大きくなります。

キッチンカーの設備投資に融資・補助金を受けやすくなる

キッチンカーの法人化により、金融機関からの融資や公的補助金を受けやすくなります。個人事業主では審査が厳しいケースでも、法人として事業計画書や収支報告書を整備して提出できれば、事業拡大のための車両増設、設備投資、拠点(セントラルキッチン)の開設などの資金を確保しやすくなります。たとえば、日本政策金融公庫の創業融資や、地方自治体の移動販売支援補助金なども検討できるでしょう。資金繰りを安定させ、チャンスを逃さず成長に繋げる土台が作れるのは大きな強みです。

車両増加や人材採用に有利になる

キッチンカーの売上が安定し、複数台体制での運営やスタッフの雇用を考えるなら、法人化は非常に有利です。法人であれば、社会保険の整備や労働契約の明確化がしやすくなり、アルバイトだけでなく正社員の採用にも前向きな姿勢を見せられます。また、「法人運営のキッチンカーブランド」としての信頼性があるため、フランチャイズ展開や業務提携もしやすくなります。例えば、「移動販売+店舗型展開」などのハイブリッドな経営戦略を考える際も、法人なら柔軟な体制が築けるため、事業の成長スピードが格段に上がります。

イベント出店に有利など社会的信用が向上する

法人としてキッチンカーを運営することで、行政機関・取引先・イベント主催者などからの社会的信用が高まります。実際に大規模なフェスや行政イベントでは、法人格がないと出店できない場合もあります。法人名義での契約により、イベント主催者や会場オーナーから「しっかりした会社」と認識されやすく、取引条件もスムーズに進むことが多いでしょう。また、保健所の許認可、食品衛生管理、営業届出などでも法人名義があると書類整備が一貫し、信頼を得やすくなります。結果的に、営業チャンスの幅が広がり、安定的にビジネスを進めることができます。

キッチンカーでの飲食営業を法人化するデメリット

キッチンカーの個人営業から法人化を検討する際、多くの方がメリットに目を向けがちですが、法人化すると生じるコストや手続きの複雑さなどのデメリットも理解しておく必要があります。本章では、法人化によるデメリットを解説していきます。

設立・維持にコストがかかる

法人化には設立費用がかかり、維持にも一定のコストがかかります。例えば、株式会社の場合は、定款作成費用や登記手数料、法人税の申告費用などが発生します。また、法人税や消費税の申告を行う必要があるため、税理士に依頼すると、その費用も加わります。キッチンカーが1台だけで運営されている場合、このコストが収益に対して過剰になってしまうこともあるため、コスト面を十分に考慮する必要があります。

会計処理や申告が複雑になってしまう

キッチンカーを法人化すると、個人事業主のように簡単に会計処理を行うことができなくなります。法人としての複式簿記による記帳義務が発生し、法人税の申告や消費税の申告などが必要となります。特に、キッチンカーのように移動販売を行う場合、ガソリン代やイベント出店料、仕入れ費用などが複雑に絡むため、経理や申告がより難しくなります。この手間はデメリットの一つです。

スタッフの社会保険の加入義務が発生する

法人化することで、従業員や役員が一定の条件を満たす場合、社会保険(健康保険や厚生年金)に加入しなければならない義務が生じます。キッチンカーでスタッフを雇用する場合、法人化後に社会保険への加入が必要となり、事業のコストが増える可能性があります。特にスタッフ数が増えると、その分の保険料負担が大きくなるため、社会保険の管理も含めたコストを事前に確認しておくことが大切です。

契約上の規制が増え柔軟性が損なわれる可能性がある

法人化することで、個人営業時のような柔軟な契約が難しくなることがあります。例えば、キッチンカーのイベント出店契約において、法人格を持つことで契約条件が厳格になり、契約書の作成や契約内容の交渉に時間がかかることがあります。また、法人化により、会社の運営に関する規制が増えるため、個人営業時のように自由に営業活動を行うことができなくなる場合もあります。特にキッチンカーならではの、柔軟な営業スタイルを重視している場合には、これがデメリットとなることがあります。

キッチンカーでの飲食営業を法人化する時の手続きの流れ

キッチンカーの営業が軌道に乗ると、法人化を検討する方も増えていますが、いざ手続きを始めようとすると、何から始めればいいのか分からないという声も多く聞かれます。そこで本章では、キッチンカー営業を法人化する際の基本的な手続きの流れを、わかりやすく解説します。

法人形態を選ぶ(株式会社か合同会社か)

キッチンカー事業を法人化する際、まず「株式会社」か「合同会社」のいずれかを選ぶ必要があります。一般的に合同会社は設立費用が安く、決算公告義務もないため、小規模なキッチンカー事業者にとっては負担が少ないというメリットがあります。一方、株式会社は社会的信用が高いため、企業イベントや自治体主催の大規模イベントに出店したい場合に有利です。たとえば、地域フェスや大手スーパーの催事スペースを借りる場合、株式会社でないと契約が難しいケースもあります。自身の今後の展望や取引先との関係性を見据えて、どちらの形態がふさわしいかを慎重に検討しましょう。

定款の作成と公証役場での認証

株式会社を設立する場合には、事業内容を記載した「定款」の作成が必要になります。定款には、会社名・所在地・事業目的などを記載しますが、キッチンカーの場合、事業目的に「移動販売業」「飲食物の調理及び販売」「イベント出店」など、実態に即した表現を入れておくと後々の融資申請や許認可申請がスムーズになります。作成後は、公証役場にて定款認証を受けなければならず、これには別途費用(約5万円前後)がかかります。キッチンカーの開業準備と並行して行うには時間と労力が必要なので、専門家に依頼することも検討すると良いでしょう。

登記申請と法人番号の取得

定款認証を終えたら、次は法務局で会社の登記申請を行います。登記が完了すると、法人として正式に設立され、国税庁から法人番号が付与されます。この法人番号は、キッチンカーの営業許可申請や助成金の申請、取引先との契約など、あらゆるビジネスシーンで必要になります。登記には、定款の写し、発起人の印鑑証明書、資本金の払い込みを証明する書類などが必要です。たとえば、複数台のキッチンカーを展開予定の場合、登記時に営業所の住所や代表車両の管理拠点を明確にしておくと、後々の保健所や消防署の対応がスムーズです。

銀行口座の開設と資本金の払い込み

法人の登記後は、会社名義の銀行口座を開設し、資本金を払い込みます。資本金は1円からでも設立可能ですが、キッチンカーの車両購入費や備品・原材料の仕入れ、イベント出店費用などを考慮すると、最低でも50万円以上は必要になるでしょう。法人名義の口座を作るには、登記簿謄本や印鑑証明書、法人番号が必要となり、手続きには数日かかる場合があります。法人名義の口座があることで、仕入先や出店先との取引が信用されやすくなり、「個人名義の振込先はちょっと…」と懸念されることも避けられます。特に法人契約が必要な移動販売スペースなどでは、大きなメリットです。

税務署や都道府県、市区町村への届出

最後に、法人設立後は必ず税務署や地方自治体への届出を行う必要があります。税務署には「法人設立届出書」や「青色申告承認申請書」などを提出し、都道府県と市区町村には「法人事業開始申告書」を提出します。これらの提出を怠ると、税制上の優遇措置を受けられないだけでなく、後から延滞金や追徴課税が発生する可能性もあります。キッチンカー事業の場合、地域密着型の販売を行うことが多いため、各自治体のルールにも注意が必要です。たとえば、「移動販売業者向けの軽減措置」や「地域イベント出店優遇制度」がある場合、届出をきっちり行っておくことで活用できる制度が増えるというメリットもあります。

キッチンカーでの飲食営業を法人化した時のよくある失敗と対処法

キッチンカー営業を法人化することで事業の幅が広がる一方、準備不足や理解不足から思わぬ失敗に陥るケースも少なくありません。ではどのような失敗があり、どのように対処すればよいか解説します。

売上見込みに実績が伴わない

キッチンカーの法人化でよくある失敗の一つが、事業計画上の売上見込みが現実と乖離してしまうことです。特にイベント出店やランチ営業など、立地や天候に大きく左右されるキッチンカーでは、法人化で複数台展開すれば売上も比例すると過信しがちです。しかし、台数が増えても出店場所の確保や人員の教育が追いつかず、想定していた収益に届かないケースは多々あります。

対処法としては、まず1台の運営で安定した収益モデルを構築した上で法人化に踏み切ることです。また、イベントや出店先の選定では、過去の売上データを活用し、実績ベースで売上予測を行う習慣付けが欠かせません。

小規模・1台運営で思ったより節税効果が小さくなってしまう

法人化によって節税ができると期待していても、1台のみの小規模運営では経費や役員報酬などを差し引いても、実際の節税効果があまり実感できないケースがあります。たとえば、車両維持費や仕入れ原価があまりかからないメニュー構成のキッチンカーでは、個人事業のままの方が税務コストを抑えられることもあります。

対処法としては、法人化前に税理士にシミュレーションを依頼し、「年間売上」「経費割合」「役員報酬」などを踏まえて損益分岐点を見極めることです。さらに、将来的に複数台運営や従業員雇用を見込んでいるかどうかを検討した上で、法人化のタイミングを判断しましょう。

業務と経理・法務などの管理業務の両立が困難になってしまう

キッチンカーの営業は仕込み・移動・販売と日々の業務がハードな上、法人化後は会計帳簿の作成や税務申告、労務管理などの事務作業が一気に増えます。特に一人で運営している事業者の場合、営業後に経理業務をこなすのは大きな負担となり、結果的に事務が滞ることで罰則やペナルティに繋がることもあります。

対処法としては、法人化を機にクラウド会計ソフトの導入や税理士・社労士への外注を検討し、業務の分業体制を構築することが効果的です。また、日々のレジ締めや経費入力などをルーチン化し、営業のスキマ時間に少しずつ処理しておくことも両立のポイントです。

まとめ

キッチンカーの法人化には、節税や信用力アップなど多くのメリットがありますが、一方で手続きやコストの面での注意点もあります。

本記事では、法人化の判断基準や具体的な方法、起こりがちな疑問について詳しく解説してきました。

しかし、実際に自分のケースに当てはめると、やはり迷いや不安が出てくるものです。

もし本記事を読んで疑問や不安が残った場合は、専門家へ相談してみましょう。

なお、はぎぐち公認会計士・税理士事務所では、キッチンカー 法人化に関するご相談も承っております。

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