会社設立後は青色申告をしよう!申請期限や手続き方法を徹底解説

目次

会社を設立して間もない方は、「法人にも青色申告が必要なのか?」「申請方法や期限は?」といった疑問をお持ちではないでしょうか。設立初期は資金繰りや節税対策が特に重要で、税務申告の選択は経営に直結します。

そこで本記事では、会社を設立したばかりの経営者や、これから法人化を検討している方に向けて、会社設立後に青色申告を選ぶべき理由や白色申告との違い、申請方法やよくある質問を整理し、役立つ知識を解説します。ぜひ、御社に最適な申告方法の判断と、将来の節税や資金繰り改善に役立ててください。

青色申告が会社設立後に重要な理由

会社を設立すると、法律上の法人として扱われ、事業活動で生じた収支に対し、必ず税務署へ決算を報告して税金の申告をしなければなりません。そのため、会社を設立すると、必ず向き合うことになるのが、税務申告方法の選択です。

法人の税務申告は、大きく分けて青色申告と白色申告があります。本章では、青色申告の仕組みやメリット、白色申告との違いを整理し、会社設立後に青色申告を選択する意義を解説していきます。

青色申告とは何か

青色申告とは、法人が正規の簿記に基づいて帳簿をつけ、決算書を作成し、税務署に申告する方法です。単に税金を納めるだけでなく、経理をきちんと行う代わりに多くの優遇措置を受けられるのが大きな特徴です。会社設立において青色申告を選択することで得られるメリットは大きく、経営の安定にも直結します。

青色申告の主なメリットは以下です。

項目内容
欠損金の繰越控除事業赤字を最大10年間繰り越し、将来の黒字と相殺できる
30万円未満の資産を一括で経費にできる特例パソコンや事務用品などの少額資産をすぐに費用計上できる
青色欠損金の繰戻還付制度赤字を前期の黒字にさかのぼって相殺し、前期に納めすぎた税金の還付を受けられる

一方で、青色申告を行なう事のデメリットは、ほとんどありません。ただ、青色申告では複式簿記に基づいた正確な会計処理が求められるため、会計知識がない場合は会計ソフトを導入したり専門家に依頼したりする必要があります。青色申告のデメリットを強いてあげるとするなら、帳簿付けの手間が増えることでしょう。

白色申告との比較

白色申告とは簡易的な帳簿付けで申告できる方法です。帳簿作成の負担は軽く、設立当初に経理体制を整えていない会社でも対応しやすい点が特徴といえます。しかし、青色申告のような欠損金の繰越や少額資産の一括償却といった優遇措置は一切ありません。そのため、短期的には手間が減るように見えても、長期的に節税効果を享受できず、資金繰りに不利となります。

青色申告と白色申告の違いは、経理の正確さと引き換えに得られる税制上のメリットの有無です。ただ、白色申告を選択するにしても、正確に税申告を行うには、帳簿付けや経理処理を厳格に行なうことは避けられません。節税効果や経理上のメリットを考えると、圧倒的に青色申告を選ぶ企業が多いのが実情です。

特に設立間もない企業にとっては、資金繰りや経営基盤の安定が最重要課題となるため、税制面で優遇措置が受けられる青色申告の活用は経営戦略の一部ともいえる存在です。会社経営を考えるなら青色申告を選ぶことが圧倒的に有利といえるでしょう。

会社設立時の青色申告の申請方法

これまでで、青色申告を選択すると、欠損金の繰越控除や少額資産の即時償却といった大きな節税メリットを受けられることがわかりました。では実際に会社を設立し、青色申告をしたいと思った場合、どのように手続きすればよいでしょうか。はじめにすべきなのは、「青色申告承認申請書」の提出です。

ただし、この申請には提出期限や提出先、必要書類の記入などいくつかのルールが定められており、期日を過ぎるとその事業年度は青色申告を利用できなくなる点に注意が必要です。本章では、青色申告承認申請の手順を具体的に解説していきます。

提出期限

青色申告承認申請書には厳格な提出期限が定められています。原則は以下の通りです。

  • ・会社設立日から3か月以内
  • ・最初の事業年度が終了する日まで

上記のいずれか早い日までに提出しなければなりません。

例えば、4月1日に会社を設立し、事業年度を翌年3月末とした場合は、7月1日までに申請書の提出が必要です。もし期限を過ぎてしまうと、その事業年度については白色申告扱いとなり、青色申告による控除や特例を受けられなくなります。会社設立後は登記や銀行口座開設など多忙な手続きが続きますが、青色申告の申請は優先順位の高い手続きとして早めに準備することが重要です。

提出先

青色申告承認申請書は、「会社の本店所在地を管轄する税務署」へ提出します。会社登記の際に法務局へ届け出を行いますが、税務関係の管理は所在地を基準に管轄税務署が決まります。申請は直接窓口へ持参するほか、郵送やe-Taxを利用したオンライン提出も可能です。特にe-Taxを利用すると、控えが電子データとして保存でき、書類のやり取りがスムーズになります。提出先を間違えると受理されない可能性もあるため、会社設立時にはあわせて「税務署から送られてくる法人設立届出書の案内」などを確認しておくと安心です。まずは所轄税務署を明確にし、提出方法を選択しましょう。

必要書類と記入例

青色申告の申請には以下の書類が必要です。

出典:国税庁 青色申告の承認申請書

(1)日付

税務署へ直接提出する場合はその提出日を、郵送の場合は投函日を記載します。

(2)税務署長殿

「税務署長殿」の前に、会社の本店所在地を管轄する税務署名を記入してください。

(3)納税地

法人の本店所在地と電話番号を記入します。固定電話がなくても、携帯番号で差し支えありません。

(4)法人名等、法人番号、代表者氏名、代表者住所、事業種目、資本金または出資金額

法人登記時の情報をそのまま記載します。法人番号は国税庁の「法人番号公表サイト」で調べられます。代表者氏名の横には押印欄があるので、必ず法人実印を押しましょう。事業種目が複数ある場合は、定款に記載されているものの中から主要なものを選んで記入すれば問題ありません。

(5)自令和〇年〇月〇日〜至令和〇年〇月〇日

青色申告を適用したい年度を記入します。設立初年度から利用する場合はその年度を記載しましょう。例えば、令和元年10月1日に設立し、決算期を9月とした場合は「自令和元年10月1日〜至令和2年9月30日」となります。

(6)「記」1. 次に該当するときには(以下略)

設立初年度から青色申告を行う場合、「この申告後、青色申告を最初に提出しようとする…」の箇所にチェックを入れます。日付欄には設立年月日を記載してください。正確な日付は履歴事項全部証明書を確認すると確実です。

 (7-1)「記」2. 参考事項 (1)帳簿組織の状況

帳簿名には「総勘定元帳」「仕訳帳」を記載します。さらに、現金出納帳や預金出納帳を作成する予定があればそれも記入します。帳簿の形態は、クラウド会計ソフトを利用する場合は「会計ソフト」とし、自作の場合は「ノート」「Excel」など、実際に使用する方法を記載します。記帳頻度は、年単位・四半期ごと・月ごと・週ごと・随時など予定に合わせて選びます。これは申請時点の目安であり、後に変更しても問題はありません。

(7-2)「記」2. 参考事項 (2)特別な記帳方法の有無

クラウド会計ソフトやパソコンを利用して記帳する場合は「ロ 電子計算機利用」にチェックを入れます。

(7-3)「記」2. 参考事項 (3)税理士が関与している場合におけるその関与度合い

税理士に経理を依頼している場合は、その範囲を具体的に記載します。たとえば「伝票整理からの一切の事務」「総勘定元帳からの記帳以降の事務」など、実際の依頼内容に応じた表現を使いましょう。

(7-4)税理士署名押印

申請書を税理士に作成してもらった場合は、その税理士に署名と押印をしてもらいます。署名は自筆で記入する必要があります。

記入例は国税庁のウェブサイトにひな型が掲載されているため、参考にしながら漏れや誤りがないように仕上げましょう。書類は会社実印を押印し、提出の際は控えをとっておくと安心です。

書類提出後の流れと承認通知

書類を提出すると、税務署により内容が確認され、問題がなければ青色申告の承認がなされます。特別な審査が行われるわけではなく、要件を満たしていれば原則として承認されます。承認の可否は、後日税務署から送付される「青色申告承認通知書」により確認できます。もし通知が届かない場合でも、税務署に問い合わせれば承認状況を確認可能です。

承認を受けた後は、実際に複式簿記に基づく帳簿を作成し、決算書を整えて申告を行います。青色申告は単なる書類提出で終わるのではなく、正確な経理処理を前提に継続していきましょう。

会社設立時の青色申告に関するよくある質問(Q&A)

ここからは、会社設立時の青色申告に関して寄せられるよくある質問とその回答を紹介します。

Q. 初年度の申請期限を過ぎたら、今後青色申告することはできないですか?

A. 以後ずっと青色申告ができないわけではありません。

ただし、初年度に提出期限を過ぎてしまった場合、その事業年度については残念ながら青色申告を利用することはできません。初年度に青色申告の申請ができなかった場合には、翌期以降であれば再度申請を行うことで青色申告に切り替えることが可能です。つまり、一度期限を逃しても将来的に利用を諦める必要はありません。

ただ、初年度に青色申告を使えないと、欠損金の繰越や節税メリットが失われるため、会社設立時は早めに提出することが強く推奨されます。

Q. 個人事業から法人化した場合にも再度青色申告の申請が必要ですか?

A. はい、必要です。

個人事業で青色申告をしていたとしても、法人を設立すると新しい「法人格」として扱われるため、改めて法人名義で青色申告承認申請書を提出する必要があります。個人事業時代の承認は法人に引き継がれることはありません。法人化に伴い、事業年度や帳簿の付け方も異なるため、会社設立から3か月以内、もしくは最初の事業年度終了日までの期限を守って申請しましょう。

Q. 一人会社でも青色申告は必要ですか?

A. はい、一人会社であっても青色申告を選択することは重要です。

法人は株主や役員の人数にかかわらず税務申告の義務があるため、青色申告を利用することで欠損金の繰越控除や少額資産の一括経費化といったメリットを享受できます。特に設立初期の一人会社は赤字になりやすいため、将来黒字になった際に繰り越した欠損金を使えるようにしておくことは資金繰りの安定に大きく役立ちます。

Q. 赤字でも青色申請する意味はありますか?

A. あります。

青色申告の大きなメリットのひとつが「欠損金の繰越控除」です。事業で赤字が出た場合、その損失を翌年度以降の黒字と相殺でき、最長10年間繰り越せます。つまり、設立初年度が赤字であっても青色申告をしておけば、将来利益が出た際に法人税を大幅に減らせる可能性があります。また、赤字時でも30万円未満の資産を経費計上できるなどの特典があり、経営基盤を支える意味で青色申告を選択する価値は大いにあります。

まとめ

青色申告は、正確な帳簿付けを前提に、大きな節税メリットをもたらします。

欠損金の繰越控除や少額資産の一括償却など、会社経営を支える制度が充実しており、特に資金繰りが不安定な設立初期に効果的です。

申請期限を逃すと当該年度は利用できないため、設立後すぐに準備しましょう。

長期的な経営戦略を考えるなら、青色申告の選択は欠かせません。

はぎぐち公認会計士・税理士事務所では、会社設立の青色申告に関するご相談も承っております。

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