タクシーで会社設立を考えている方必見!会社設立の流れやかかる費用を徹底解説

目次

個人タクシーとして営業している中で、そろそろ法人化を考えたいと思う方もいらっしゃるでしょう。個人事業主として収益が安定し、税負担が増えてきた段階で「会社設立」を検討するのは自然な流れです。

そこで本記事では、個人タクシーから法人化を検討する最適なタイミングや税制上のメリット、会社設立までの流れ、初期費用や補助金制度などを解説します。将来を見据えて、より安定した事業運営を目指す方に役立つ内容です。

個人タクシーから会社設立する目安

個人タクシーとして長く事業を続けていると、収入の増加に伴い所得税の負担が大きくなったと感じる方もいらっしゃるかもしれません。個人事業主としての所得が一定以上になると、累進課税の影響で税率が高くなります。そうなると、法人化した方がよいのか悩まれるでしょう。

個人タクシーから会社を設立する際は、いくつかのタイミングがあります。まずは、利益が年間約800万円を超えたタイミングです。なぜなら、法人税率は所得税の最高税率より低く設定されており、個人所得が高くなるほど法人化による税負担軽減のメリットが大きくなるためです。例えば、例えば、個人タクシーの場合、年間所得が695万円を超えると所得税の税率は23%、900万円を超えると33%、1,800万円を超えると40%に達します。(出典:国税庁 No.2260 所得税の税率)一方、法人税は年間所得800万円までの部分は15%(中小法人の軽減税率)、800万円を超える部分は23.2%となります。(出典:国税庁 No.5759 法人税の税率)つまり、利益が800万円を超えると個人で課税される所得税率よりも法人税率のほうが低くなり、法人化することで税負担を軽減できます。

さらに、法人化すると経費計上の幅が広がる点も検討材料になります。個人事業主では経費として認められる範囲が限られるケースがありますが、法人の場合は役員報酬や法人名義での車両購入、事務所や備品、社会保険料など、より多くの支出を経費に含められます。

また、会社設立は単に節税だけでなく、事業の成長や信用力の向上にもつながります。法人格を持つことで、金融機関からの融資が受けやすくなるほか、取引先や顧客からの信頼性も向上します。タクシー業界では、車両のリース契約や新規事業への投資など、法人としての信用が役立つ場面も多くあります。

このように、売り上げの向上や、節税、信用力強化などが、法人化を検討するタイミングになるでしょう。ただし、法人化には設立費用や法人税の申告義務、社会保険加入など、個人事業主時代には不要だった負担も発生します。最終的な判断は、利益や経費の状況を把握し、法人化によるメリットとデメリットを比較したうえで慎重に行いましょう。

タクシー会社設立の流れ

タクシー会社を設立するには、会社形態の選定や基本事項の決定、定款作成や資本金払い込みなど、順を追って手続きを進めます。本章では、各ステップの流れや手続きを解説し、設立にかかる費用の目安や内訳を解説します。

ステップ1:会社形態を決める

まず会社の形態を決定します。一般的には株式会社と合同会社が選択肢になります。株式会社は出資者が株主となり、将来的な資金調達や信用力の面で有利ですが、設立手続きや運営コストがやや高めです。一方、合同会社は設立費用や維持費用が低く、柔軟な経営が可能ですが、対外的な信用力では株式会社に劣る場合があります。事業規模や将来の展望、融資利用の可能性を踏まえて、最適な形態を選びましょう。

ステップ2:会社の基本事項を決める

会社設立にあたり、会社名・本社所在地・事業目的・資本金・発起人・役員構成などの基本事項を決定します。会社名は同一商号の有無を確認し、事業目的は「一般乗用旅客自動車運送事業」と記載します。資本金は法人税や運転資金を考慮して設定しましょう。役員構成では代表取締役1名、取締役2名を設置する例もあります。基本事項は定款作成や登記申請に必要な情報になるため慎重に決めましょう。

ステップ3:定款を作成

定款には会社の基本ルールや事業内容を記載し、公証役場で認証を受ける必要があります。必ず記載する事項は以下です。

  • 商号
  • 事業目的
  • 本店所在地
  • 設立に際して出資される財産の価額または最低額
  • 発起人の氏名または名称および住所
  • 発行可能な株式総数

事業目的には「一般乗用旅客自動車運送事業」を明記し、資本金や発起人、株式総数なども定めます。合同会社の場合は公証人認証が不要ですが、株式会社では必須です。定款作成により、会社の運営ルールが明確化され、将来のトラブル防止につながります。電子定款を利用すると印紙代4万円を節約できます。

ステップ4:資本金の支払い

定款認証後、発起人は資本金を金融機関に払い込みましょう。例えば、資本金1,000万円を設立時に払い込む場合、払い込みを証明する銀行の振込明細書を登記申請時に提出します。株式会社では株式の引受と同時に資本金が確定し、合同会社では出資持分を払い込むことで設立準備が完了です。資本金は運転資金や初期投資の確保にも関わる重要な手続きになります。

ステップ5:登記申請を行う

資本金払い込み後、法務局で会社設立登記を行いましょう。登記申請書には定款、発起人決定書、資本金払込証明書、印鑑証明書を添付します。登記完了後、法人としての登記簿謄本が取得でき、社会的信用が得られます。例えば、東京都内で株式会社を設立する場合には、管轄法務局に申請し、1週間~2週間程度で登記完了です。登記により法人格が正式に成立します。

ステップ6:法人化後:個人から法人への切り替え

会社設立後、個人タクシーとして登録していた車両や運行管理者、車庫などの名義を法人名義に変更しなければなりません。タクシー車両の自動車登録を法人に切り替え、運輸局で事業許可証の名義変更手続きを行いましょう。また、個人で加入していた自動車保険やリース契約も法人契約に切り替え、法人として正式にタクシー事業を運営できる状態に整えます。これで、法人として税制面や経営面でのメリットも享受できるようになります。

続いて、個人事業主としての事業は廃業手続きを行いましょう。「個人事業の開業・廃業等届出書」を所轄税務署に提出し、個人事業を正式に廃業します。併せて、都道府県税事務所への「事業開始(廃止)等申告書」も提出すれば、地方税の手続きも完了です。これで、個人から法人への完全な切り替えが完了し、法人としての活動が正式に認められます。

タクシー会社設立の費用

タクシー会社を設立する際には、会社設立費用に加え、車両購入や営業所の整備、許可申請にかかる費用など、多くの初期投資が必要になります。本章では、設立にかかる費用の目安や内訳をみていきましょう。

設立にかかる初期費用と資本金の目安

タクシー会社設立時には、以下のような費用がかかります。

  • 株式会社設立の資本金:最低でも500万円程度
  • 車両購入代(増やす場合):仮に5台導入する場合は1台あたり300万円として合計1,500万円
  • 営業所の賃貸契約や改装費用(必要な場合):約200~300万円

これらをすべて用意すると考えると、初期投資総額は2,200~2,300万円程度になります。資本金は法人税率や融資申請に影響するため、事業規模に応じて適切な金額を設定しましょう。

定款作成・登記・登録免許税などの費用内訳

  • 定款の作成:電子定款で約5万円、紙定款の場合は印紙代4万円
  • 登録免許税:株式会社で15万円
  • 登記手続き依頼料(司法書士):約10~20万円程度

これらは、会社設立に必要な経費です。合計すると、会社設立手続き費用は20~30万円程度が目安になります。初期費用にはこれらを考慮し、資金計画をより正確に立てましょう。

タクシー会社設立時に利用できる補助金・助成金制度

これまでみてきたように、タクシー会社の設立や運営には多額の資金が必要になります。自費ですべてを用意するのは負担になるため、資金確保が肝心です。国や自治体では、タクシーの会社設立時に使用できる補助金や助成金が用意されているため、上手に活用して初期投資や車両導入費用を軽減しましょう。そこで本章では、代表的な国・都の制度を具体例とともに紹介します。

国土交通省の「地域公共交通確保維持改善事業」補助金

国土交通省が実施する「地域公共交通確保維持改善事業」は、過疎地域や都市周辺でのタクシー・バス運行を支援する制度です。例えば、新規タクシー事業を立ち上げる際、運行車両購入費の一部(最大1/2程度)を補助してもらえる場合があります(出典:国土交通省「地域公共交通確保維持改善事業」)。この補助金を活用すると、車両導入の初期費用負担を大幅に軽減でき、事業開始のリスクを低減できます。

東京都限定「次世代タクシー導入」助成金

東京都では、ハイブリッド車や電気自動車など次世代タクシー導入に対して助成金を提供しています。例えば、EVタクシー1台あたり最大200万円の補助を受けられる制度があります(出典:東京都「次世代タクシー導入助成金」)。この助成金を利用すれば、環境対応車両を導入する際の初期費用を大幅に抑えられるため、設立初期の資金計画をより柔軟に立てられるでしょう。

タクシー会社設立を成功させるポイント

タクシー会社の設立は、登記して単に車両を用意するだけでは成功しません。競合が多い業界で事業を安定させるためには、他社との差別化や効率的な集客戦略が必要になります。そこで本章では、成功のための具体的なポイントを解説します。  

他社との差別化

競争の激しいタクシー業界で成功するには、他社と差別化できるサービスを提供することが重要です。例えば、以下のようなアイディアがあります。

  • 高齢者・障がい者に特化した「ケアタクシー」
  • 子育て世代向け「キッズタクシー」
  • 多言語対応ドライバーによる「観光タクシー」
  • 女性ドライバーによる「女性専用タクシー」
  • Wi-Fi・充電・領収書電子発行対応の「ビジネスタクシー」など

都心部で高齢者向け送迎サービスを提供したり、観光地で多言語対応可能なドライバーを揃えることで、一般タクシーとの差別化が図れます。また、車両にWi-FiやUSB充電を完備するなど、快適性を高める付加価値も有効です。差別化戦略を明確にすることで、リピーター獲得や口コミによる集客につながります。

集客の工夫

タクシー会社の集客は、効率的な配車やプロモーションがカギとなります。例えば、以下のようなアイディアがあります。

  • 配車アプリとの連携(GO・DiDi・S.RIDEなど)
  • 法人契約・定期送迎契約の獲得
  • SNS・LINE公式アカウントの活用
  • 深夜・早朝割引・定額制サービスの導入
  • 地域イベント・企業とのコラボレーション

スマホアプリによる配車予約や定額料金サービスの導入、法人契約を結び、送迎や社員利用を安定的に獲得する方法もあります。さらに、SNSや地域広告を活用した情報発信で新規顧客の獲得やキャンペーンの告知を行うなどの方法もあります。受け身の姿勢ではなく、工夫を凝らした集客が重要になります。

まとめ

個人タクシーから法人化するタイミングは、利益が年間800万円を超えた頃が目安といえます。

法人化によって節税効果や信用力向上が期待でき、事業の拡大や融資の面でも有利になります。

一方で、設立費用や社会保険の負担といった新たな責任も発生します。

本記事で紹介した会社設立の流れや補助金制度、成功のポイントを踏まえ、自身の事業規模や将来計画に合わせて最適な選択を行いましょう。

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