創業支援のご相談をお受けする時に多いのが、いつから法人になるべきかという相談です。
法人化するのはいつでもできますが、やみくもに法人化すると場合によっては失敗してしまう可能性もあります。
そこで今回は「いつ法人化すべきか」をテーマに、法人化するのに適したタイミングを紹介します。
法人化すべきか、適切なタイミングはいつなのかと悩んでいらっしゃる経営者の方は必見です。
【この記事を読んで欲しい人】
- 法人化したいけど、いつすればよいのか迷っている経営者の方
- 法人化をするなら、慎重に判断してリスクを減らしたいと考える経営者の方
【この記事のポイント】
- 法人化が適切と考えられるタイミングは6つある。
- ただし、法人化したいという強い熱意があればタイミングは関係なく実行を。
法人化のタイミング6選
法人化をするのに適したタイミングは6つあります。
- 12月末
- 創業時
- 個人事業主で所得が600万円を超えた時
- 消費税課税事業者になる直前
- 事業パートナーができた時
- 借入したい時
では、それぞれ順番に解説していきます。
12月末
法人化をするタイミングは12月がおすすめです。
個人事業主は、1月から12月までの事業所得を翌年の2月~3月に確定申告します。
そこで、12月に個人事業主をやめて、1月から法人になれば、翌年は法人の決算のみを対応すればよいことになります。
もし、個人事業主をやめて法人化するのが、1月スタートではなく3月スタートになってしまうと、法人の決算に加えて、1月と2月分の確定申告の両方をしなければなりません。
確定申告のコストを考えると、キリよく12月で個人事業主をやめ、法人に切り替えるのが賢明です。
創業時
勤めていた会社を退職して事業を始めようと思った時や、今している仕事をもとにして独立しようと思った時、創業時は法人化するのによいタイミングです。
もちろん、個人事業主で始めておいて、事業が大きくなったら法人するというやり方もあります。
始めてみないと事業の先行きがわからないので、初めから法人化をするのは怖い、という考え方もあると思いますが、事業の内容や経営方針によっては、初めから法人化した方がよい場合もあります。
事業規模が大きい業種だったり、初年度から出した利益を会社に蓄積していきたい、という場合は法人化の方が有利です。
そこで、法人化するかどうかのチェック項目を以下にまとめてみました。この項目でYESが多い人は、法人化をおすすめします。
番号 | 項目 | YES | NO |
---|---|---|---|
1 | 事業規模を大きくしたい | ||
2 | 創業時から借り入れを希望する | ||
3 | 事業の勝算がある | ||
4 | 上場・バイアウトを目指している | ||
5 | 人を雇用したい | ||
6 | 第三者から資金的支援を受けたい |
まずは、創業から事業規模が大きい場合、あるいは事業規模を大きくしたいと思っている場合、人を雇いたいと思っている場合は、法人が有利です。特に、求人では「会社」となっている方が人が集まりやすくなります。
事業にあたって出資をしてほしい場合も法人化をおすすめします。個人の借り入れでもいいのですが、法人化して個人主体の借り入れとは分けた方が有利です。
個人事業主で所得が600万円を超えた時
売上から経費を引いた事業所得が600万円~1,000万円になる場合は、法人化による管理コストを引いてもメリットがでる水準です。
このタイミングも法人化に適しています。
ちなみに600万円というのは売上ではなくて、経費を引いた事業所得です。
また、給与所得の上に副業などで事業所得がある方になると、もっと低くてもメリットがあり600万円というハードルが下がります。
消費税課税事業者になる直前
消費税法ではこれまで、創業から2期は免税事業者になれました。
売上が1,000万円を超えたり、2年経過すると課税事業主になりますが、3期目に課税対象になりそうなので、そのタイミングで法人化する、という選択肢も持てました。
法人化すれば、そこからまた1期・2期は免税になれるので、この方法で合計4年間免税ができる仕組みを利用できました。
ただ、令和5年10月からインボイス制度が導入されたため、対応は変化した部分もあります。
ただ、これまで免税事業者だったのが課税事業者になる時というのは、法人化するタイミングと判断できます。
事業パートナーができた時
事業パートナーができて、共同出資や共同経営をしたい時は法人化のタイミングです。
というのも、法人であれば共同経営ができますが、個人事業主では共同経営ができません。
複数で出資や経営がしたい場合は、法人化のタイミングです。
借入をしたい時
借入をしたい時も法人化のタイミングです。
個人で借り入れをする場合、審査が厳しかったり、保証人が必要になるなどハードルが高い場合があります。
また、個人事業の負債は、個人が負う事になります。
法人で借り入れをする場合、もちろん審査はありますが、会社であることで信用力が増し、借入先の幅が広がります。
結果、金融機関からの融資が受けやすくなったり、投資家からの出資を受けることもできるなど調達面で有利になります。
法人化するタイミングは「法人化したい時」?!
法人化するタイミングは、前述の6選だけではありません。
上場するのは会社でなければならないので当然ですが、「上場したいと思った時」も法人化のタイミングです。
また、「法人化したい!」と思い立った時も法人化するタイミングです。
このように言うと、なんともロジカルではない話ですが、このように言わざるを得ないケースがいくつもあるのです。
私は、お陰さまで、年間かなりの数で創業支援のご相談をお受けしています。
そのなかで、個人事業主のままでいるか、法人化すべきかという相談はたくさんあります。
そろそろ法人化しても良いかのご相談をお受けしていて、色々とお話をうかがっていると
税務的には個人事業主でもよい状況の方がいらっしゃいます。
その時はご相談者様のために、「個人事業主のままでいらっしゃる方が良いですよ」とはっきりお伝えしています。
ところが、法人になれないと聞くと、何とも寂しそうな顔をされて残念がる方がいらっしゃいます。
そこで、「税務の話では個人事業主の方が良いと判断しましたが、ご自身がやりたいという熱意を強く持っていらっしゃるのであれば、もう設立したらいいんじゃないですか?」とお伝えしたところ、
「え?いいんですか?」と嬉しそうにしていらっしゃいました。
駄目だと聞いたときには肩をおとされていたのが、法人化するとなるとぱっと表情が明るくなるのです。
冒頭にお伝えしたように、法人化するタイミングに規定はありません。
言ってしまえば、やりたければいつでも法人化してよいのです。
私が会社を設立した時のことを思い出すと、当時は売上うんぬんよりも、自分が独立した象徴として会社を設立したかったので法人化をしました。
私のケースでいえばタイミングは「創業時」だったわけですが、特段、勝算があったわけではありません。
前述のご相談者様のケースや、私のケースからも、税金の話でメリットがあるというだけでなく、「法人化したい理由がある」「法人化することでやる気になる!」のように経営者のモチベーションがあがる要因になるなら、それが法人化のタイミングと言えます。
創業の会社は、経営者の皆さんの熱意こそが一番の強みです。
なので、メリットデメリットを考えるよりも、法人化したい熱意があるならした方が良いと、私は思います。
まとめ
今回は、法人なりを考える第二弾として「法人化するタイミング」について解説しました。
普段から、創業支援のご相談をたくさんお受けさせていただきますが、その中でも多いのが法人化すべきかという話題です。
本記事でもご紹介した通り、法人化は思い立った時にしてよい!とはいえ、実行するか悩む方も多くいらっしゃるでしょう。
法人化するかどうか判断する方法については、他の記事もご参照いただければと思います。
なお、記事を読んでも自分だけでは判断がつかないと感じられる方は、はぎぐち公認会計士・税理士事務所の無料相談へお気軽にお問い合わせください。