【有料級】売上を上げる具体的方法とは?要素分解の方法と事例を紹介
私は、公認会計士・税理士として会計事務所を経営しており、個人事業主や会社の税金計算などの仕事をしています。
一方で、経営改善のコンサルタントとして、日々、未来を変えるお手伝いをお客様に提供してまいりました。
創業以来、全力を尽くして多くの成果を出してきたと自負しています。
そのなかでも今回は、「売上を上げるための具体的方法」を皆さまにご紹介したいと思います。
【この記事のポイント】
- 「売り上げを上げたい」という経営課題に対し、その要素を「客数」「単価」「頻度」というふうに分けて考えるのが要素分解。
- 要素分解ができるようになると、根拠に基づいて判断できることが増える。
- 利益をあげる4つの要素は「売上単価」「変動費単価」「販売数量」「固定費」。
- 4つの要素はどれを改善しても売り上げは上向くが、どの要素を選ぶかによってインパクトは変わる。
【この記事を読んでほしい人】
- 経営課題の発見や改善に悩んでいる経営者
自社の「売上を上げる」方法を見つける要素分解とは
まずはじめに、私が様々なご相談を受ける中で見えてきた、売上を上げるために必要な手法をご紹介します。
それは、「要素分解」です。
あれ、どこかで聞いたことあるよ、と思った方もいらっしゃると思いますが、それは中学の数字で習う因数分解のことではないでしょうか。
ちなみに、方法は覚えていますでしょうか?もちろん、忘れてしまっても全く問題はありません。
さて、学校で習う因数分解は、数字や数式を積(かけ算)の形で表すことを言います。
例えば、30という数は「2×3×5」でも表せますよね。
30=2×3×5
私が言う要素分解とは、この因数分解を会社の経済活動に当てはめてみたらという発想です。
では、どのように要素分解していくのか、手順を説明します。
要素分解の手順
例えば「売上を上げたい」という経営目標があったとしましょう。
ここでまず、「売上を上げる」というのは何からできているのかを、分解していきます。
売上=客数×客単価×頻度
このように要素分解すれば、「売上を上げたい」という経営目標に対して
- 新規客数をふやすためにはどうしたらいいか
- 客単価を上げるにはどうしたらいいか
- 一度きてもらったお客様にリピートしてもらうにはどうしたらいいか
というように考えることができるようになるでしょう。
また「上げる」ということも
上げる=減少分<増加分
と考えると
- 新規客を増やすにはどうしたらいいか
- 既存客を減らさないためにはどうしたらいいか
という考えに行きつきます。
このように要素分解をすると、目標に対していくつもの道すじが見えます。
それぞれの方向からアプローチすれば、より的確かつ効果的な行動が見つかります。
「売り上げをあげたい」ならば、
- 客数を増やすための行動
- 客単価を上げるための行動
- リピートしてもらうための行動
- 新規客を獲得するための行動
- 既存客を減らさないための行動
を計画・実行する。それが「売上をあげる」という目標への道すじです。
各要素を改善していくことで、目標である「売上をあげる」に近づく行動ということになるのです。
いかがでしょうか?
目標達成のための道すじは1つではありません。
要素分解によって「何が何でも売れ」という精神論から脱却し、道はいくつもあることが見えてくるようになります。
かけ算と足し算の要素分解
数字の因数分解とは異なり、要素分解には「かけ算」と「足し算」があります。
例えば、A事業とB事業、2つの事業を展開している会社の場合、
売上=A事業の売上+B事業の売上
になりますね。
そして、その事業も
売上=客数×単価
で構成されています。
つまり、
売上=(A事業の客数×単価)+(B事業の客数×単価)
となります。
売上を上げる要素分解の具体例
通常なら、「売上を上げたい」と思っていても、何をすればいいのか適切な行動にはなかなか辿りつきにくいものです。
しかし、要素分解することによって、やるべきことが見えてくるようになります。
ここで、とある会社(A社とします)の具体例をご紹介します。
A社の社長から、売上をアップさせるためにはどうしたらいいか、というご相談を受けたときのエピソードです。
A社長、売上アップといっても、道筋はありますか?ちなみに、こちらの考え方はご存知でしょうか。
売上=A事業売上+B事業売上
*売上の要素分解(事業別)
まずは、売り上げを事業ごとに分解します。御社の場合は、A事業とB事業がありますが、どちらをよりアップさせたいとお考えですか?
売上の8割を占めているA事業をアップさせたいと思っていて
ではそのために、どのような施策をお考えですか?
まず、10周年記念キャンペーンで、広告を打とうかと思っている。それから、来店してくれたお客様には、次回使える割引券を渡してまた来てもらえるように促そうと思っているよ。
なるほど、それは良いお考えですね。他にはありますか?
他に?うーん、そんなところかなあ。
なるほど、わかりました。ところで社長、A事業の売上は売上=客数×客単価なので、数量と客単価、どちらをアップしても売上は上がりますよね?
そうか、売上を上げるためには、客数を増やすことしか考えられていなかったんだな。客単価を上げても売上は上がるね。
そうなんです。では、客単価を上げる方法はありそうですか?
商品の単価を値上げすれば客単価も上がるけど。先月に材料の仕入れ高騰の影響で値上げしたばかりだから、
しばらくは値上げはしたくないのが本音なんだよ。
それでしたら、商品単価の値上げ以外の方法で考えてみましょう。
客単価=商品単価×購入数量ですから、商品単価を上げたくないのであれば、お客様一人あたりの購入数量を増加させようという方法もありますね。何かできることはありますか?
じゃあ、セットデザートのメニューを追加しようかな。
それから、お土産メニューを作ってみるか。
いいですね。さらに客数は
1. 既存客
2. 紹介によるお客様
3. 広告を見てくるお客様
4. イベントで来てくれるお客様
で構成されています。そう考えると、客数を増やす方法で他に考えられることはありませんか?
そうだね、2と4あたりでまだ何かできるかなと思う。
このように、要素分解はどこまででもできます。可能性は広がる一方ですね。
どんどんアイディアが広がっていきませんか?
営業力を強化するには、同じ売上アップでも、様々な要素分解が可能です。
たとえば、営業パーソンが商材を売ってくるという事業を考えてみましょう。
「営業のやつらにびしっと言ってやらないと」「新たにノルマを課そう」といったいつものパターンの発想に陥りがちではないでしょうか。(今の時代にはパワハラになってしまうかもしれません。)
これも、社長との対話を再現してみましょう。
社員に頑張ってもらって、営業にもっと力を
入れていきたいと思っているんだ。
営業に力を入れていくのですね。具体的にはどんなことを考えていらっしゃるんですか?
とにかく営業パーソンの採用に、これまで以上に
力を入れようと思っているんだ。
いいですね。御社の場合は売上を、①営業パーソンの数×②1人当たりの平均営業成績というように考えてみてください。
①については、まず採用を強化するという事ですが、それ以外には何ができそうですか?
それ以外?
では、営業パーソンの数=先月末の人数+今月の採用ー今月の退職、と考えましょう。
営業パーソンの数を増やすには、他にどんな手立てがありますか?
そうか、退職の数を減らすことも考えないといけないんだな。
うちは離職率が結構高いから、離職率を下げるための施策を何か考えないといかんな。
離職率が下がれば熟練の社員が増えて、結果的に②もあがってくるだろう。そうか!そこを改善するのがうちの急務なんだな。
いいですね。では②では、他にどのようなことができそうですか?
そうだな。
②は要素分解してみると、1人当たりの平均商談数×平均成約率、ってことになるかな。
おお、掴んできましたね!
まずは、全体の商談数を増やすために、会社として広告投資を追加してみよう。その上で、成約率を向上させるために必要な、ちゃんとした教育研修とかその仕組みを考えていかないといけないな。
営業教育の研修を検討してみるよ。
後はチーム制にして、できる営業から教えたり学んだりする機会を作ってみようかな。
ということは人事評価の仕組みも考え直さないといけないな。
おおー、いいですね!
要素分解することで、売上を上げるために何が最も必要なのか。
また、ある要素については何も考えていなかった、そういう手があったか、ということを、数字(この場合数式)が社長に教えてくれているのがわかるでしょう。
経営の課題を「要素」に分解していき「その要素を改善するとしたら」と考えると「できること」「やるべきこと」が見えてきます。
この要素に分解するところを、要素分解と呼んでいます。
要素分解をした先に、行動施策を考えることができるのです。
要素分解の目的の1つは「数字から行動を導き出す」ことにあります。
要素分解ができるようになると・・・
要素分解を実践していくと、判断できることがどんどん増えていきます。
要素分解によって「原因を分析する」こともできるんです。
成約客数だけで見ていると、「今月は3人受注した」で終わってしまいます。
でも、成約客数=集客数×成約率、と要素分解して毎月計測していくと見える景色が変わってきます。
「成約数が少ない理由は、集客数が少なかったのか、成約数が低かったのか」
と考えることができます。
例えば「成約数」をみると、いずれも3件ですが、毎月の推移を比較していくことで、今、集客に手を打つべきなのか、成約率に手を打つべきなのか、その両方なのかが見えてきます。
また、営業パーソンごとに成約数と集客数を比較すれば、集客が得意な営業パーソン、成約率が高い営業パーソンが際立ってきます。
それぞれに、得意分野をインタビューして、やり方を他の営業パーソンとシェアしたり、逆に低いところを手当てしてあげたりすることができれば、1人ひとりの売上も上がっていきそうですよね。
さらに、集客数=広告からの集客+紹介からの集客+HP(ホームページ)からの集客、などと要素分解すれば、どこからの集客が上手くいっているのか、上手くいっていないのか、という事も数字が語ってくれるでしょう。
「注力したいのは広告だ」と決まったら、2種の広告を出して効果を比較、いわゆるABテストを実施して、広告の文言やデザインを改善したりしていくといった具合です。
要素分解をすすめていくと、社長の目に映る風景がどんどん広がり、根拠に基づいて判断できることが増えていきます。
利益を上げる4つの要素とは
もしあと50万円、1ヵ月当たりの利益を上げなければいけないとしたら何ができますか?と聞かれたら、どう考えますか
- 売上を上げる
- コストを下げる
などがすぐに思いつくでしょう。
では、ここでも要素分解をしてみましょう。
営業利益は、営業利益=(売上単価ー変動費単価)×販売数量ー固定費、で表すことができます。
この式の「=」の先には「売上単価」「変動費単価」「販売数量」「固定費」の4つの要素があります。つまり利益を上げるには
- 売上単価を上げる
- 変動費単価を下げる
- 販売数量を増やす
- 固定費を下げる
の4つの方法があるという事が分かりますね。
「営業利益をアップするにはどうしたらいいのか」と考えていると、問題が大きすぎて答えが出にくいものです。それより、
- 売上単価を上げるには、なにができるか
- 変動費単価を上げるには、なにができるか
- 販売数量を増やすには、何ができるか
- 固定費を下げるにあh、何ができるか
と要素に分けて、それぞれについて考えてみてください。
要素分解する前よりも、より多くのアイデアが出てきませんか?
要素ごとにインパクトは異なる
売上単価、変動費単価、販売数量、固定費の4つの要素のどれにアプローチしても営業利益は上向きます。
「よし、まずは固定費を見直していこう!」と思われるかもしれませんが、ちょっと待ってください。
固定費削減ももちろん効果は有りますが、要素ごとに改善させたときの利益に対するインパクトには大小があるという事をお話ししたいと思います。
営業利益は、営業利益=(売上単価ー変動費単価)×販売数量ー固定費、で表せます。
この式に、具体的に数字を入れて計算してみましょう。
ベースとなる条件として
売上単価1,000円、変動費単価600円、販売数量5,000個、固定費80万円とすると、
(1,000円ー600円)×5,000ー80万円=120万円
となるので営業利益は120万円です。
では、それぞれの要素を10%ずつ改善した場合に、利益がいくらになるかを計算してみましょう。
- 売上単価を10%上げた場合(売上単価1,100円)
(1,100円ー600円)×5,000-80万円=170万円→営業利益は170万円
- 変動費単価を10%下げた場合(変動費単価540円)
(1,000-540円)×5,000-80万円=150万円→営業利益は150万円
- 販売数量を10%上げた場合(販売数量5,500個)
(1,000円ー600円)×5,500-80万円=140万円→営業利益は140万円
- 固定費を10%下げた場合(固定費は72万円)
(1,000円-600円)×5,000-72万円=128万円→営業利益は128万円
この事例でもわかるように、どの要素を改善しても営業利益は増えているのですが、要素によって営業利益に与えるインパクトは異なってきます。
そのため、限られたリソースの中で、より効果的で効率的な行動を選択するためには、「よりインパクトの大きい要素はどれか」と分析し、検証するのがコツです。
要素分解した式に数値を入れてみて、「この要素を〇%改善したらどうなるかな」と計算してみるだけなので、やり方はとても簡単です。
ぜひ、今すぐにでも実践してみてください。
まとめ
弊社では創業以来、会計事務所の仕事と並行して、数字の力で企業の業績を向上させていくという「事業計画・進捗管理のコンサルティング」にも携わってきました。
コンサルティングの対象は、創業したての会社から、成長企業、2代目、3代目で事業改革をしようとしている会社まで、年商数千万円~20億円くらいの規模の中小企業様です。
たくさんのお客様の課題を解決していく中でみつけたノウハウを、これからも多くの方に伝えていきたいと思います。
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