会社設立は、多くの人にとって重要なターニングポイントです。特に会社設立が初めての方にとって、その流れや手続き方法はわかりにくいと感じられるでしょう。そこで本記事では、会社設立の流れや手続き方法、株式会社と合同会社の設立の違いもわかりやすく解説します。起業を検討している方や、設立後の運営を円滑に進めたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
会社設立の手続きの流れ
個人事業主とは異なり、会社を設立するとなるとさまざまなルールに従い、手続きを行わなければなりません。では、会社設立の手続きにはどのようなものがあり、どのように進めるでしょうか。そこで本章ではまず、手続きの流れをお伝えします。
- 会社の基本事項を決める
- 定款を決め作成する
- 銀行口座を開設し資本金を払う
- 法務局に設立登記申請をする
- 設立後の各手続きをする
個人事業主の場合は事業と個人が同一ですが、会社設立は法人という「別人格」をつくる行為になります。法人は個人とは独立した存在として扱われ、法律上も経済活動上も個人とは異なる権利と義務が発生します。そのため、登記や役員の決定、定款の作成などの法的手続きが必要になるのです。
会社設立の手続き方法
続いて、会社設立の手続き方法を詳しく解説していきます。
会社の基本事項を決める
会社設立にはまず、会社の基本事項を決めていきます。内容は、会社の形態、商号(会社名)、事業目的、本店所在地、資本金、会計年度、役員や株主の構成などです。
会社形態
新設可能な会社形態には、株式会社、合同会社、合名会社、合資会社の4種類がありますが、社会的信用度の高さや出資に伴う責任が限定されることなどから、株式会社が最も一般的です。費用を抑えたい場合は合同会社も検討の余地があります。
商号(会社名)
商号は会社名のことで、サービスや商品など会社を表す重要なものです。社名で使用できる文字や符号には制限があり、類似するものがない名称にしなければなりません。なお、社名の前後には「株式会社」などの法人格が入ります。
事業目的
会社が行う事業の範囲を定めるもので、将来行いたい事業も含めて定款に記載することが推奨されます。ただし、一貫性のない多くの項目を記載しすぎると社会的信用に影響するため、10項目以下に抑えるのが望ましいです。特に、事業目的は定款に記載されるため、慎重に決めましょう。
本店所在地
法的な拠点となる住所を設定します。自宅やバーチャルオフィスも本店所在地にできますが、設定した後に変更する際は変更登記が必要になります。できるだけ、長期で使用する場所を所在地にした方がよいでしょう。
資本金
資本金は会社運営の基礎となる資金です。法律上は1円からでも設立可能ですが、社会的信用度の低下や運営の不安定さを避けるため、運転資金の3ヶ月分程度は準備しておくのが一般的です。また、一部の許認可が必要な事業(建設業など)では最低資本金が定められている場合もありますので、注意が必要です。
定款を決め作成する
続いて会社の定款(ていかん)を決めていきます。定款とは、会社の基本的な情報やルールを記載した文書で、会社設立で最も重要な書類の一つです。
定款には、事業目的、商号、本店所在地、資本金額、発起人の氏名と住所などの「絶対的記載事項」が含まれており、これらが記載されていない定款は無効になります。なお、定款は、紙形式でも電子形式でも良い事になっています。電子定款はコスト削減に有効ですが、必要な機器や手続きが少し面倒に思うかもしれません。紙定款の場合は、公証役場に提出するために3部作成し、それぞれを製本して署名押印する必要があります。
銀行口座を開設し資本金を払う
定款の認証が完了したら、資本金を発起人の個人口座に払い込みます。資本金を支払ったら、払込証明書として、通帳の表紙と振込内容のページをコピーしておきましょう。この書類は、後の登記申請で必要になります。なお、法人口座はまだ開設できないため、この段階では個人口座を使用するのが一般的です。
法務局に設立登記申請をする
資本金の支払いが終わったら、法務局で登記申請を行います。登記申請に必要な書類は、登記申請書、定款、発起人の決定書、設立時取締役や監査役の就任承諾書、資本金の払込証明書、印鑑届出書などです。
登記手続きには、登録免許税が必要です。株式会社の場合は、15万円または資本金の0.7%のどちらか高い方の金額が必要になります。通常、申請から10日ほどで登記は完了します。申請に不備があった場合には法務局から連絡がありますが、登記完了の通知はありませんので、登記事項証明書を取得することで確認が行えます。
設立後の各手続きをする
会社設立が終わると、税金や社会保険などの手続きに入ります。
税金関係の手続き
会社所在地を管轄する税務署にて、法人設立届出書や法人税、消費税の届けを提出します。また、都道府県税事務所および市町村役場へ、法人住民税・法人事業税についての届けを提出します。
社会保険関係の手続き
健康保険や厚生年金保険に関する届けを、年金事務所に提出します。仮に従業員が自分1人の会社だとしても、原則社会保険に加入しなければなりません。
法人口座開設の手続き
会社設立時、資本金を用意する段階では法人口座は開設していませんでしたが、今後の事業では個人口座とわけるために必要になります。会社設立後の手続きと並行して、口座を開設しておきましょう。
会社設立後の手続きは以上です。なお、従業員を雇う場合には、労災保険や雇用保険などの労働保険関係の手続きも必要です。労災保険は労働基準監督署、雇用保険はハローワークにて手続きします。
株式会社・合同会社の設立の違い
会社設立の大まかな流れは同じですが、会社形態が株式会社か合同会社かによって、異なる内容もあります。そこで本章では、株式会社と合同会社の設立の違いを解説します。
株式会社 | 合同会社 | |
所有と経営 | 分離 | 一致 |
利益配分の決め方 | 株主が決める | 自由 |
設立費用 | 約24万円 | 約10万円 |
決算報告義務 | 必須 | 任意 |
株式会社と合同会社の根本的な違いは、所有者と経営者が同一か異なるかにあります。株式会社は所有者と経営者が異なり、合同会社は同じです。
設立時の違いは、かかる費用が異なる点です。株式会社は定款を公証人に認証してもらう必要がありその分の費用がかかりますが、合同会社は定款の認証が不要なためその分の費用が抑えられます。なお、株式会社は利害関係者のために決算書を毎年公告する義務がありますが、合同会社にはその義務がないなどの違いもあります。
会社設立をする際の注意点
会社設立にはさまざまルールや手続きの注意点が存在します。それらをよく理解できていない場合、思わぬトラブルが発生するかもしれません。そこで本章では、事前に知っておいた方がよい、会社設立をする際の注意点を紹介します。
設立手続きには時間がかかる
会社を設立するには、書類の作成や公証役場での認証、法務局での登記申請などで時間がかかる点に注意しましょう。会社の設立には多くの書類が必要になり、その準備や審査に時間がかかるため、設立までに1か月かかることも珍しくありません。さらに、各種届出や銀行口座の開設などの手続きも含めると、事業開始までの期間が長引く可能性があります。事業に支障が出ないよう、スケジュールには余裕をもって取り組みましょう。
赤字でも税金の支払いがある
会社設立時の注意点の一つは、たとえ赤字でも納税義務があるという点です。法人税の対象となる利益が、ゼロまたはマイナスでも「法人住民税の均等割」を支払わなければなりません。均等割は、会社の規模や所在地に応じて課される税金で、利益の有無に関係なく毎年発生します。個人事業主の場合は赤字だと住民税もありません(一部例外あり)ので、この点に注意が必要です。
会社を解散させる時も費用がかかる
会社を解散する際にも費用がかかる点にも留意が必要です。事業を終了して会社を解散する場合、設立時と同じように手続きが必要で、登記手数料や広告費用など、清算に伴うコストが生じます。こちらももちろん、個人事業主の場合は不要な費用です。会社設立時点で、将来の解散にはコストがかかる点も念頭に置いておきましょう。
まとめ
本記事では、会社設立の手続きの流れや方法、株式会社と合同会社の設立の違いについて解説しました。会社設立に必要なステップや注意点を理解することは、起業のために重要です。本記事の内容が、起業を考えている方の参考になれば幸いです。
なお、はぎぐち公認会計士・税理士事務所では、起業に関するご相談も承っております。
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