会社設立を検討している方にとって、書類の準備は重要なステップです。株式会社と合同会社では、求められる書類が異なるため、正確な情報が知りたいと思っていらっしゃるのではないでしょうか。そこで本記事では、株式会社と合同会社それぞれの設立に必要な書類を一覧で紹介します。必要書類のチェックや注意点の確認に活用していただければ幸いです。
株式会社と合同会社の設立時に必要な書類は違う
会社設立にはさまざまな書類が必要になりますが、株式会社と合同会社では必要な書類が異なります。そこで本章では、それぞれの設立で必要な書類一覧を紹介します。
株式会社を設立際に必要な書類
株式会社設立に必要な書類は主に8つで、場合によって追加で用意すべき書類が4つあります。以下は、それぞれの書類と概要を一覧にまとめた表です。書類の準備のチェック表としても活用してみてください。
●必須書類
番号 | 必須書類の名称 | 概要 |
---|---|---|
1 | 登記申請書 | 会社情報や登録免許税、添付書類を記載する申請書 |
2 | 登録免許税納付用台紙 | 収入印紙を貼り付けて提出、消印は登記機関がおこなう |
3 | 登記すべき事項 | 登記内容を作成する書類で、株式会社か合同会社かによって内容が大きく異なる 提出は書面や、CD-ROMなども使用可能 |
4 | 定款 | 会社の基本ルールを定めた書類 |
5 | 取締役の就任承諾書 | 取締役の就任を承諾したことを証明する書類 |
6 | 資本金払込証明 | 資本金が所定の口座に振り込まれたことを証明する書類 |
7 | 印鑑届出書 | 会社の実印を登録するための申請書 |
8 | 印鑑証明書 | 発起人と取締役それぞれの印鑑証明が必要になる |
●場合によって必要になる書類
番号 | 書類の名称 | 概要 |
---|---|---|
1 | 発起人の決定書 | 発起人全員の合意のもとに本店所在地が決定されたことを証明する書類 ただし、定款で番地まで本店所在地を記載している場合は不要 |
2 | 代表取締役の就任承諾書 | 取締役の他に代表取締役がいる場合に必要 |
3 | 監査役の就任承諾書 | 取締役会を設置しており会計参与を置かず監査役がいる場合に必要 |
4 | 取締役員全員の印鑑証明書 | 取締役会を置かず取締役員が複数の場合、全員の印鑑証明書が必要 |
合同会社を設立際に必要な書類
合同会社の場合も必要になる書類は似ていますが、社員が一人しかいない場合は必須書類の数が少なくなります。それぞれ内容を確認していきます。
●必須書類
番号 | 必須書類の名称 | 概要 |
---|---|---|
1 | 合同会社設立登記申請書 | 会社情報や登録免許税、添付書類を記載する申請書 |
2 | 定款 | 会社の運営に関わる基本規則を記載したもの 提出は書面や、CD-ROMなども使用可能 |
3 | 資本金払込証明書 | 資本金が振り込まれたことを証明する書類 |
4 | 代表社員、本店所在地および資本金の決定証明書類 (*1もしくは本店所在地および資本金の決定書) | 定款作成の際、代表社員、本店所在地、資本金額の定めがなかった場合に必要 社員が一人の場合は*1の方を提出 |
5 | 代表社員の就任承諾書 | 社員が一人の場合は不要 |
6 | 登記すべき事項 | 登記申請書に加え別紙で詳細を記録する |
7 | 収入印紙貼付台紙 | 設立登記の手数料の印紙を貼る台紙が必要 |
8 | 印鑑届書 | 会社の実印を登録するための申請書 なお、手続きには個人の実印と印鑑登録証明書も必要 |
なお、届出を本人が行わない場合は、代理人の委任状が必要です。代理は司法書士に依頼することも可能です。
必要書類の作成方法
会社設立の為に準備すべき書類はわかりましたが、それぞれどのように作成すればよいでしょうか。そこで本章では、前章で紹介した必要書類の作成方法を解説します。
登記申請書
法務局のサイトから、取締役会の設置有無や会社設立方法に応じたフォーマットをダウンロードします。記入見本があるので、それを参考に必要事項を記入していきます。
登録免許税納付用台紙
収入印紙は、郵便局や市町村役場、法務局で購入可能です。株式会社の場合は資本金の0.7%(最低15万円)、合同会社は0.7%(最低6万円)になります。収入印紙購入後、法務局のウェブサイトからダウンロードできる台紙に収入印紙を貼り付けたら完成です。
登記すべき事項
CD-R等に作成する場合には、法務省のウェブサイトから、登記事項の作成例のテキストデータを開きます。テキストデータをパソコンのメモ帳にコピー&ペーストして作成できます。入力が終わったら、名前を付けてCD-Rに書き込めば完成です。もし紙で作成する場合には、体裁に特に指定はなく自由に作成してよいことになっています。
定款
定款の作成は、以下の3ステップで進めます。
- 記載内容の決定:会社の重要事項を記載し、必須項目(目的、商号、本店所在地など)やオプション項目(株式譲渡制限、取締役会設置など)決定。
- 定款作成:定款はA4用紙片面に横書きし、発起人全員の署名や印が必要。内容は会社法に基づき、6つの章(総則、株式、株主総会など)で構成。
- 公証人の認証を受ける:作成後は公証役場で認証を受ける。オンライン認証も可能で、印紙代が不要となるなどのメリットがある。
取締役の就任承諾書
この書類は、会社法第330条に基づき、役員が会社から委任されて就任するために必要です。フォーマットは法務局のウェブサイトからダウンロードし、見本を参考にして作成します。書類には押印が必要です。
資本金の払込みを証明する書類
まず発起人個人の口座に資本金を振込みます。発起人が複数いる場合は、必ず「振込」にして振込人の名前が記載されるようにしましょう。つづいて、通帳の表紙、裏面、振込金額が確認できるページをコピーします。通帳がない場合は、取引明細やネット銀行の取引画面のプリントで代用可能です。証明書の作成は、法務局のフォーマットを使用します。証明書と通帳のコピーをまとめ、会社の代表印を割印して完成です。
印鑑届出書
印鑑届出書の作成にはまず、はんこ屋やオンラインで注文し印鑑を作成します。印鑑は1cm超え3cm以内の正方形で、一般的には二重丸印で外枠に会社名、内枠に「代表取締役印」を刻印します。続いて、法務局のウェブサイトからフォーマットをダウンロードし、必要事項を記入します。押印欄が2つあり、左上には代表者印、右側には印鑑提出者の実印を押します。
印鑑証明書
印鑑登録証明書の作成には、市町村役場で実印を登録することからはじめます。身分証明書(免許証、パスポート、マイナンバーカードなど)と実印が必要になります。登録は無料で、登録後にそのまま印鑑証明書を発行することも可能です。後ほど取得する場合は、町村役場やコンビニエンスストアでも発行可能です。取得には印鑑登録証や身分証明書が必要で、コンビニを利用する場合はマイナンバーカードも必要です。取得費用は200円~500円になります。
必要書類の綴じる順番は決まっている
必要書類はただ提出すればよいというわけではなく、書類を綴じる順番が決まっています。ルールをしっかりと把握して、抜け漏れがないようにしましょう。
【書類を閉じる順番】
- 登記申請書
- 登録免許税納付用台紙
- 定款
- 発起人の決定書
- 各就任承諾書
- 印鑑証明書
- 資本金の払い込みを証する書面
印鑑が必要な書類(登記申請書や登記すべき事項を記載した書面、収入印紙を貼った登録免許税納付用台紙など)は、会社実印を忘れず押印するようにしましょう。印鑑届出書については、一緒に綴じずに、クリップでまとめておくようにしましょう。
必要書類の提出
登記書類は一般的に法務局の窓口で直接提出するのが主流ですが、郵送での提出も可能です。郵送の場合は「本社所在地を管轄する法務局」に送付します。事前に法務局のホームページで管轄の法務局を確認しておくとよいでしょう。
会社設立のための登記は重要な手続きのため、書類に不備があると、法務局から修正や補正、再提出が求められることがあります。特に株式会社設立では、登記申請書、定款、登録免許税の収入印紙、払込証明書、取締役の就任承諾書、印鑑届出書など、多くの書類が必要です。書類の不備や記載漏れがないか十分に確認し、書類を正確に準備するよう心がけましょう。適宜、専門家のサポートを活用することをおすすめします。
書類作成時に気をつけるポイント
会社設立時の書類作成には、正確さが求められます。必要な書類や提出方法を誤ってしまうと、再提出を求められるなど余計な手間がかかってしまいます。そこで本章では、書類作成時に気を付けるべき重要なポイントを解説します。
提出方法の選択
書類の提出方法は「書面申請」と「電子申請」があり、それぞれルートが異なります。書面申請の場合は、法務局の窓口へ直接持参するか、郵送が選べます。一方、電子申請ではオンラインで手続きができます。 なお、電子申請を利用する場合、必要なソフトウェアやデジタル証明書が求められるため、早めに準備しておくことをおすすめします。
書類郵送は書留で
書類を郵送する場合は、「書留」で送るようにしましょう。普通郵便でも郵送できますが、書留にすることで書類の紛失リスクを軽減できます。万が一の郵便事故に備え、追跡できるようにしておきましょう。また、封筒には「登記申請書在中」と明記し、申請書には連絡が取れる電話番号を記載しておくと、法務局からの連絡をスムーズに受け取れます。
法務局の管轄に注意
法務局には「不動産登記」と「商業・法人登記」の管轄区域があり、これらが異なる場合があります。また、一部の支局や出張所では商業・法人登記の手続きが行われていないため、対応していない場所に郵送しないようよく確認しましょう。まずは、自社の管轄する法務局を公式サイトなどで確認し、正しい場所を確認しておきます。担当は、都道府県の本局や広域支局の場合が多いので、必ず確認するようにしましょう。
まとめ
本記事では、会社設立に必要な書類の一覧や、提出の注意点などを解説しました。会社設立時に必要な書類は多岐にわたり、それぞれ正確に準備することが求められます。登記申請書や定款、払込証明書、印鑑届出書など、はじめて申請をする場合、それぞれの書類の内容がわかりにくいと感じることもあるでしょう。そんな時、本記事の内容が参考になれば幸いです。
また、今回は記載しておりませんが、設立後に行う手続きとして、税務署や社会保険事務所への届出も必須(一部例外あり)であり、法人設立届出書や社会保険の加入手続きを忘れずに行う必要があります。また、法人口座の開設も早急に進める必要があります。
なお、はぎぐち公認会計士・税理士事務所では、司法書士事務所や社会保険労務士事務所との提携もございます。設立時~設立後にすべき事をサポートいたしますので、まずは無料相談フォームまで。
どうぞ、お気軽にお問い合わせください。